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絶望の詩  作者: 燃花
3/9

どこにでもあるような

今日の気分は最低。


いつもいつだって、最低。


眠りに落ちて、目覚めたとき、私はいつだって何かに苛立っている。


どうして目を覚まさないといけないの?


なんで?


どうして?


しあわせな夢を見ていた気がする。


何かに追いかけられて、食べられる寸前。


恐ろしい生き物。


それもいい。


ここで私の人生は終わるのか。


そんな軽い覚悟を決めた瞬間、


どうして私は。


目を覚ますの?


寸前決めたあれはなんだったんだろうか。


私の決意を、私ではない何かがいつだって簡単に無かったことにするんだ。


世界に軽んじられている。


生命の軽さ。


数多ある生命の、たったひとつの私の命。


そりゃ軽いさ?


でもたったひとつの私の命。


私にとっては唯一無二よ。


それを諦めた私を、残酷に救うのはやめて。



こんないつもの嘆きを脳内でリフレインしたまま、なんとか現実に意識を引き戻そうと窓に目をやる。


日光と薄闇が混じった時間帯。


早朝の知らせではないことは、経験からわかる。


「あぁ、日が暮れる。」


また快活な日のもとでの活動をし損ねた。


F U C K


アルファベットをゆっくりと噛みしめる。



さて、また瞼を閉じたいところだけれど、鬼の居ぬ間に外に出なくては。


今日はとてもラッキーな日だ。


幸運も幸運、予定があるぞ。


あと1時間後。飲む約束をしている。

勿論間に合わない。



「またか…。」



絶望に絶望を塗り重ねながら、なんとか身を起こ…


起こせれば話は早い。


「やばい。二度寝フラグ。」


「だめだ。起きなきゃ、起きてるよ、目は覚めてる。」


ボディの方を、オフトゥンから出さなきゃ、意識が夢に連れてかれる。


F U C K






寝た。幸いにも15分で起きれた。

今日は良き日だ。


これなら待ち合わせをドタキャンしなくて済む。


脱色しすぎてパキパキになった髪の毛に無添加らしい果実のオイルを染み込ませて落ち着かせる。


甘い香りが優しく広がって、その甘さに包まれて心も落ち着く。


深呼吸。



「いや、こんなゆっくりしてる場合じゃあないんだよ。」



ベトついた手では何も触れない。


クラクラする頭を重たげに持ち上げて、どうにか階下のシンクに辿り着く。


右手にミルク石鹸、左手でお湯を出して両の手をすり合わせる。


オイルはなかなか落ちない。


「はぁ、だる。めんど。」



熱すぎるお湯を顔にかけて、ジンジン痛む手にもかまわずテキトーに服で手を拭きながら部屋に戻る。



薄いグレーと深い青の透明なガラスみたいなあれを瞳に染み込ませ、ぼやけていた世界が輪郭を取り戻す。


「今日もくそぶさいくやな。」


今目が覚めたみたいに、意識もハッキリする。


突然目の前に現れたボロボロの女性。


自分が気持ち悪い。


「しかたあるまーに。。。」


射殺したいが銃もないし、命を捨てる覚悟は先刻も先刻踏みにじられたばかりである。観念して顔を整える。


「今日は合コンでしから、合コンぽい服装で行くしかないお。何着よ…」


ピンクのタルト柄のタンクトップに黒のガーターベルト、白い網タイツのニーハイの気分だが、これで合コンに行ったら真面目な友人に怒られる。


「まともっぽいけど涼やかにキメられるやち…」


服の海から探し出す。


「あ、こんなんあったわ。」


水色のワンピース。この前買ったのを忘れていた。


「これや、あっさり見つかっていかったーい」


その下に黒いガーターベルトと白の網タイツを装備する。


「こんくらいなら許されるやろ……堪忍な…」


左手の中指にお気に入りの水色の石がハマった大きなカレッジリングを。

左手の人差し指にダイヤみたいな石がたくさんハマっている大きなシルバーリング。

右手の薬指にクラダリング、人差し指にはシーリングスタンプみたいなゴツい指輪。

左手の小指に愛らしいダイヤのゴールドリング、最後にゴルメットを親指に。


ブレスレットみたいな時計、大ぶりのピアスをつけて、鏡をみる。


「よし、にんげん〜」


だいぶ見れる見た目になった。


大きなハートの何も入らないバッグを片手に玄関へ向かう。


透明な厚底サンダルにテンションを上げながら、ドアを開ける。




「外の空気」


この瞬間が、大好きだ。


家には鬱屈した空気が充満していたと認識しながら、鼻腔から全身に外気が行き渡ると同時に活力が湧いてくるのを感じる。



「今日は〜いい日になりひょ〜」



i phoneを忘れていないことを確認すると、ちょうど待ち合わせ時刻を差していた。


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