移動手段
出発してしばらく、人の目も届かないであろう場所まで来たところで、わたしたちは立ち止った。
「そろそろいいかな」
「そうですわね」
「え? なにがですか?」
ぽわんっ
わたしとオジョーは変化をとき、ネコの姿に戻った。
「移動するにはこっちのほうが早いからね」
「あ、な、なるほど」
「オジョー、どっちがいい?」
「わたくし、人を乗せるのはちょっと」
「じゃあ荷物をお願い。サラ、こっちへ」
「え? は、はい」
「背中に乗って。しっかりつかまってね」
「だ、大丈夫なんですか?」
「一人くらいなら全然問題ないよ」
「し、失礼します」
サラが背中によじ登る。
「準備できた?」
「は、はい。ところでムツキさん、その、喋り方が」
「あぁ、この姿はオスだからね。敬語もいい機会かなって。嫌なら戻しますけれど」
「い、嫌じゃないです! ありがとうございます!」
「そう? じゃあ行こうか。オジョーも、準備はいい?」
「よろしいですわ」
オジョーと二匹、草原を駆け出す。
久しぶりにネコの姿で思い切り走るのは、とても気持ちよかった。ただし
「・・・疲れましたわ」
「そうだね」
ネコは長距離を走る生き物ではないので、すぐに疲れて速足程度になってしまったが。
それでも、歩幅が大きい分、人が歩くよりはかなり速い。
「このペースなら、一週間くらいで着けるかもね」
「そうですわね。もう少しのんびりでもいいかもしれませんわ」
「まぁ、疲れすぎない程度に行こうか」
それから、暗くなる前に移動をやめ野営をし、朝は明るくなってから出発するというスローペースで移動を続け、一週間。
「あれが例の山でしょうか」
「そうだね、麓の町まで行ったら情報収集もかねて少し休憩しようか」
「美味しい食事と、お風呂にも入りたいですわ」
「なら、そろそろ人間の姿に戻ろうか」
適当な場所で荷物とサラを下ろし、人型に変化する。
「あれ? ムツキさん今日は男性の姿なんですね?」
「オジョーもサラも女の子の姿だからね。一人ぐらい男がいたほうがいいかと思って」
「それなら、僕が」
「サラはまだ練習中だろう? 今回はいいから、また今度ね」
「うぅ・・・はい」
話しながら歩いているうちに、町の入り口が近づいてきた。
「さあ、行こう」
警備をしている門番に、宿や食事処の情報を聞き、町に入った。




