仲違い
「これが蘇生魔法の本だ。それにしても、こんな魔法本当に使うつもりか?」
オーグが魔法の本を渡しながら聞いてきた。
「えぇ、そのためにここまできたのですから」
「そうか、まぁ、実際に使うかどうかは中を読んでから決めてもいいと思うぞ。それにしても、お前がそこまでするということは、よっぽど大切な者なんだな」
「そうですね」
「そいつが生き返ったら、お前はもうここには来ないのか」
少し拗ねたような口調でオーグが言う。
「来ないというか、来られないと思います」
(自分自身だしなぁ)
元の世界で生き返るということは、こちらのわたしは死ぬか消えるかするのだろう。それとも、わたしの意識だけが抜けてゲームのNPCのようにこの世界で身体だけが生き続けるのだろうか。
「来られるようなら来たいとは思っていますよ。まだここにある本も全然読めていませんし、あなたとお喋りするのも楽しいですしね」
実際、オーグはこの世界に来て出会った誰よりも博識で、勉強になった。なにより、本についての趣味が合う人というのは本当に貴重なのだ。
「なら、来ればいいじゃないか。許可なら私が出すぞ」
話しているうちにわかったのだが、オーグは王様の娘、つまりお姫様という立場だった。アルビノのため外に出られず、図書室に入り浸っているうちに自分好みにカスタマイズしたくなって図書室の管理者という立場になったらしい。
「それは嬉しいのですが、そういう問題ではなくて」
わたしがどう説明したものか言い悩んでいると、オーグはむっとした表情になり
「もういい! 来たくないならはっきりそう言えばいいだろう! もともとお前はその本が目当てだっただけだもんな。とっとと持って帰れよ!」
わたしのことをぐいぐいと部屋の外へ押し出した。
「じゃあな! 二度と来なくていいぞ!」
バタンッ
目の前で力いっぱい閉められた扉。
それを見ていると、なんとも言えない気持ちになった。この世界は仮の居場所。だから住民とは親しくなりすぎないようにと過ごしていたはずだった。目的の本は手に入ったし、これ以上近しくなる前に離れられたのはむしろ良かったのではないだろうか。そのはずなのに・・・
「また、来ます」
わたしは、それだけ言うとその場をあとにしたのだった。




