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王宮へ~謁見編~

 いよいよ王様との謁見の日。まさか神殿から大きくなったオジョーを引き連れていくわけにもいかないので、王宮の近くまでサラと一緒に行き、道から少し外れたところでオジョーのネコ化とサラの魔法をかけてもらうことになっていた。


「ここまで来たら、もう一緒に行けばいいじゃないですか」


「いやです、無理です、知らない偉い人と会うなんて」


「文通相手でしょう」


「文章ならいくらでも取り繕えるじゃないですか!」


「まぁ、別にいいんですけどね」


「僕はここで待ってますから、どうぞゆっくりしてきてください」


「ゆっくりできるかは王様次第ですけどね」


 思わず苦笑してしまう。


「それじゃオジョー、よろしくね」


「わかりましたわ。サラさん、できるだけ綺麗に頼みますわよ」


「りょ、了解です」


 大きくなったオジョーに、サラが魔法をかける。


「ムツキさん、いかがかしら」


「これは、圧巻だね」


 オジョーの長い毛が風になびくたび、キラキラと虹色の粒子が周囲に舞う。じっとしていても、淡い光が取り巻いて神々しさまで感じられるほどだ。


「やっぱりもとがいいとこういうのも映えるんだなぁ」


「あの、ムツキさんも光らせますか?」


「え? いえ、わたしはいいですよ」


「そうですか? お似合いだと思うんですけど」


 なぜか残念そうなサラを残し、オジョーと王宮へと向かう。

 城門に近づくと門が開き、案内兼見張りといった感じの兵士がやってきて、謁見の間へと案内された。


 頭を下げて待つように言われ、その通りにしていると、王様がゆっくりと入室して椅子に腰かけたようだった。


「そなたが、魔法使い殿の言っておった治癒者か」


 横につく案内係に合図され、返事をする。


「はい、王様」


「魔法使い殿は息災か」


「おかげさまで、元気に過ごしております」


「そうか。なんとかぜひ一度王宮に顔を出してくれと伝えてほしい」


「わかりました」


「ところで、おぬしは王宮にある超級魔法の本が読みたいということだったな」


「はい、なんとか超級魔法を習得したく」


「あれは興味本位で触れていいものではないぞ。簡単に扱える代物でもない」


「人助けのためです」


(嘘ではない。正確には自分のためだけれど、わたしだって人だし。娘と夫のためでもあるし)


「ふむ・・・。おぬしはほかの治癒者が治せないようなケガや病気も治せるという話だったが。それが本当なら、治してもらいたい者がいる。それに成功すれば、本を見せてやってもいい」


「本当ですか」


「うむ。だが、世界中の治癒者に問い合わせたが治せないといわれたものだ。おぬしにできるか?」


「それは、診てみないと何とも。ですが、ケガの類であれば治せる確率は高いかと」


「では、診てもらおう。王子をここへ」


 そうして連れてこられた王子は、年のころは20代だろうか。そして、車いすに乗っていた。


「幼いころに落馬し、その時のケガで腰から下が動かなくなった。感覚もない。どうだ」


「落馬が原因なんですね。それなら問題なく治療できると思います」


「やはり無理・・・なに、できるといったか!?」


「長年車いすなので、いきなり走ったりできるくらいにすると体に負荷がかかりすぎるでしょうから、まずは神経と関節の動きを修復して。あとはリハビリで少し時間をかけて筋力をつければ、普通に動けるようになりますよ」


「信じられん。本欲しさにわしを謀ろうというのではあるまいな」


「とりあえず、ちゃんと診断させてください」


 触診してみると、長期間車いすの割には関節の可動域などは保たれていたし、筋肉もそこそこ残っていた。丁寧にケアされているのだろう。腰椎の変形もあったので、落馬時の腰椎骨折で神経が圧迫されたことによる麻痺で間違いなさそうだ。神経的には深部痛覚まで消失していて、神経系は根こそぎ作り直したほうがよさそうだが。元の世界だと治すのは難しいけれど、魔法で治癒ができるこの世界なら診断がつけにくい病気よりも話が単純だ。


「このまま治療に入って構いませんか?」


「準備などはいらないのか?」


「い、痛みは」


 王子が不安そうな顔で尋ねてくる。


「特に準備はありません。痛みは・・・わからないですけど多分大丈夫ですよ。痛みを感じるってことは治ってるってことですし」

 

「え? それって」


「では、はじめます」


「いや、ちょ、ちょっとま」


 王子の声を無視し、腰から治療を開始する。ああはいったが、本当に痛そうなら軽い痛み止めくらいはしてあげるつもりだった。しかし、麻痺状態から回復させるのだから、痛覚もある程度残しておかないと治療がうまくいっているか判断がつかないというのも本当の話である。

 幸い、ぎゃーぎゃーと騒ぐほどの痛みはなかったようで、治療は無事に終わった。


「では、足先を動かしてみてください」


 わたしの指示に従い、王子が指先を動かす。


「動く!」


「触られた感覚はありますか?」


「ある! 地面を踏んでいる感覚も! すごく重たいけど、足も上げられる!」


「筋力が落ちてますからね。これからリハビリ頑張ってくださいよ」


「なんということだ! 本当に治してしまうとは・・・」


「王様、約束通り、本、お願いしますね」


「あ、あぁ、いくらでも見せてやろう。おぬしに、王宮の図書室への入室を許す。気が済むまで見るといい」


 こうしてわたしは、ついに蘇生魔法へたどり着いたのだった。

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