サラのお願い
「あの、ムツキさん。その、お願いがあるんですが」
「なんですか?」
「その、授業の時なんですが、男の姿になってもらえませんか?」
「男性の姿に? そうすると少し面倒が出てくるのですが、なぜわざわざ?」
「今のムツキさんの姿で、その、せ、生殖とか言われると、気になって集中できないといいますか」
「そんなことことを気にしていたんですか」
「いや、気になりますよ! いくらムツキさんがもう大人の女性で、獣医さんで、しかも今はオスネコだって言われても・・・やっぱり見た目がその、女の子だと」
「そうですか。仕方ないですね。こちらに来てからは男性にはなっていないので、人に見られたときの対策を考えておかないといけませんが」
「すみません」
「まぁ、きちんと授業を受けてもらえたほうがこちらとしても助かりますからね。なんとかしましょう」
いままでは教会の裏などで講義をしていたのだが、わたしはミルクさんに相談し、人目に付きにくい廃墟のような場所を使わせてもらうことにした。
そこで夫の姿に変化しなおすと、
「これでいいですか?」
「あ、ありがとうございます。それにしても・・・この男の人、モデルがいるんですか?」
「あちらの世界での夫ですが」
「かっこいい人ですね」
「お世辞は別にいりませんよ」
「ほんとにかっこいいですって。僕もこんな風に生まれたかったなぁ」
「魔法で変化のようなことができればいくらでもなれますよ」
「そうですね! 僕、頑張ります!」
わたしは男性のかっこいいというのはよくわからないので、夫がそんな風に言ってもらえるのに少し驚いたが、なにはともあれ、やる気が出たようでよかった。
「では、続きをはじめましょうか」
「はい! お願いします!」
こうして、改めてサラとわたしの授業は開始されたのだった。




