実は怒っていた?
落ち着いて話を聞くため、猫たちを護衛につけながら神殿へ。
誓約書の作成が終わり、ようやく一息つけるようになった頃には日付も変わろうかという時間になっていた。
「とりあえず、話は明日にしましょうか。ベッドは私が使いますから、あなたはどこか適当に」
「えっ!? それはちょっと・・・」
「不満ですか? ・・・仕方ありませんね。毛布は譲ってあげてもいいですよ」
「そうじゃなくって。ほら、同じ部屋なんて・・・」
「一人部屋なんて贅沢言わないで下さい。あなた、自分が捕虜だということをもうお忘れですか?」
「違うよ! 僕はその、女の子と同じ部屋はまずいかなって」
「何を言っているんですか? あなたも女でしょう」
「ちがうんだよ! いや、今はちがわないけど」
「・・・あぁ、もしかして、転生前は男性?」
「そう! そうなんだよ! やっぱり君も転生者だったんだね!
ちょっと普通より薄いオーラだったから、間違いかなとも思ったけど」
「まぁ、わたしは仮転生ですから。で、あなたの心配ですが、特に問題はないでしょう」
「どうして? え、もしかして、君も男?」
「いえ、わたしはもとは女ですが、この見た目は変化で作っているだけで、本体はネコのオスですから」
「ネコ? え?」
「元の世界で言えば、化け猫、猫又といったところですね。この世界では単にネコと言っていますが」
「ばけ、ねこ」
「知らずにネコに手を出したていたんですか? というか、さっきのミルクさんたちのことどう思っていたんです」
「あの、ねこ使い、みたいな人たちかと。あと、好きすぎて、ねこと自分を同一視してる、とか」
「それ、明らかにやばい人じゃないですか」
「そうだよ! だから、とんでもないのに捕まっちゃったと思って、僕どうしようかと」
「まぁ、とんでもないものなのはかわらないと思いますが」
「ところで、君はいくつなの? 僕は15歳で転生したんだけど。同じ転生者だし、敬語じゃなくても」
「わたしは、29です」
「・・・え?」
「29歳、です」
「あ、そう、なん、です、か」
「丁寧語で話しているのは、この方が楽だというのと、わたしはまだあなたを許したわけではないので距離をおきたいという気持ちがあるからです」
「はい・・・」
「本来あなたは、ネコ全般に尊敬語と謙譲語を駆使するべきだと思うのですが、敬語の分類はご存知で?」
「学校で、やった、気がします」
「まぁ、そんなものだろうと思っていたので大目に見ますが、自分のしたことを簡単に忘れないで下さい。された側は、そんな風には切り替えられないのですから」
「うん、そうだね。あ、じゃなくて、そうですね」
「わかればよろしい。では、改めて、わたしはベッドで君はその辺で。よろしいですね」
「はい」
(やれやれ、ようやく大人しくなった。これでゆっくり寝られる)
早く寝たかったわたしは、論点をずらし、無理やりに話を終わらせたのだった。
(嘘は言っていないけれど、ね)




