尋問を開始します
「ミルクさん、脅しはそのあたりでいいでしょう」
そろそろ失禁するんではなかろうかというくらい本気で脅えている様子が伝わってきたので、わたしはとめに入った。
動物好きとして、むやみにネコを傷つけようという輩を許す気は毛頭無いが、あまりにびびりすぎて何も喋らなくなってしまっては仕方がない。
「わたしたちが本当に怒っているということは理解できましたね? しかし、無駄な抵抗はせず、包み隠さず正直に話すのであればこちらにも温情はある(かもしれない)」
ガンッゴンッ
「返事は一回でよろしい。では、これから猿轡を外しますが、くれぐれもおかしなそぶりはしないように」
ガンッ
力強く頷きすぎて地面に頭がぶつかっている。大丈夫だろうか。
結び目を解くと、震えながら何度か深呼吸をした後、少女は座りなおしてミルクさんへと向き直った。
「ご、ご、ごめんなさい~~!!」
びくんっ
突然の大声に、ネコたちの体が飛び上がる。そして、ぱんぱんに膨らむしっぽ。文字通り目を丸くして見つめる視線の先で、少女は地面に頭をこすり付けながら謝罪の言葉を口にしていた。
「ごめんなさい、僕、ただ猫が人間を恨んでくれたら魔物が出るんじゃないかって、ただそれだけで。猫を傷つけたいとか、そんなんじゃなくって。ほんとは人間同士でつぶしあってほしかったんだけど、うまくいかなかったから・・・」
「でも、実際に私たちはケガをしたわ。死にそうになった子達もいる。ムツキが居なかったら、本当に死んでいたかもしれない」
「ほんとにごめんなさい。うまく加減ができなくって」
「それでもいいと、思っていたのでしょう?」
「・・・ごめんなさい。ひどい目にあったほうが、強く人間を恨むんじゃないか、とは」
「理由はわかりました。それで? あなたはこれからどう落とし前をつけるつもりかしら? あなたが私たちにしたことを順にしてあげましょうか。それとも、一思いに八つ裂きに?」
「ゆ、許してください! 僕にできることなら何でもします! い、命だけは」
「できること、ねぇ」
「ぼ、僕、魔法が使えます! 魔物を呼び出す術式を作ったのも僕です!」
「魔物・・・あれのせいで私たちも迷惑を被ったわ。そう、あなたが」
「あ、あの」
「ミルクさん、ネコで魔法が使えるものは多いのですか?」
「ほとんどいないわ。なくても特に困らないしね」
「では、この人間、魔法分野の情報収集に使ってみるのはいかかです? 魔物にも詳しいみたいですし、新しい発見があるかも。あと、個人的に魔法を勉強しているので使わせてもらえるとありがたいです」
「そういえばあなたは神殿に居るのだったわね。でも、人間なんていつ裏切るか」
「せ、誓約書を書きます! 魔法の拘束力を持つもの!」
「ふぅん?」
「ミルクさん、とりあえず書かせておいて、本当に有効かは神殿の人間に確認しましょう」
「まぁ、それなら」
「わたしも魔法の勉強はしているので、もしおかしな動きをしたらその場で処分させてもらいます」
「しません、しません!! なんでも言うとおりにしますから!」
「では、そのことはムツキに任せます。他のものは見張りなどを手伝ってあげなさい」
ミルクさんの一声で、会はお開きとなり、ネコたちはそれぞれの持ち場へと動き出した。
「た、助けてくれてありがとう」
「別に無条件で助けたわけではありません。あなたの言っていることが嘘であったなら・・・わかりますね? でも、わたしの役に立ってくれるのであれば便宜は図りましょう」
「わ、わかったよ」
「では、まずは誓約書を。それから、先ほどあなたが言いかけていたことも含めて、いろいろと聞かせてもらいましょうか」
怖がらせすぎてもいけないと思い、少し口調を和らげ、ついでに微笑んでみる。
「な、なんでも聞いて!」
「ありがとう」
(しかし、この子は少し、極端なところがあるな。さっきまであんなに震えていたのに)
今はずいぶんとやる気に満ちた目をしている。まぁ、これなら落ち着いて話もできるだろう。




