閑話~火を吹くために~
最近使用していないので忘れがちだが、我々ネコは火を吹くことができる。この火は、練習を積むことで温度や量を調節できるようになる。得意なものなら岩を溶かすこともできるし、飛ぶ鳥を落とすことも可能らしい。船乗りのマグロさんなら、魚だって捕れるかもしれない。
わたしやオジョーはさすがにまだそこまでではないが、下級の魔法、少なくともメジが使っている火の魔法よりは威力がある炎を出せる。
しかし、当然のことながら人間は口から火を出したりはしない。つまり、ネコの火を使おうと思ったら"人がそれをできる理由”を用意するか"魔法に見えるように”使用する必要があるわけだ。
「で、今までのネコたちがどうやっていたか、オジョー知ってる?」
「知りませんわ。そもそも人間の目なんて気にしなくてもかまいませんわよ」
「いや、仮にも人の中で暮らすんだから少しは気にしようよ」
「そもそも、人間の姿で火を出すことなんてそうないんじゃありません?」
「ん~、でもぼくは、治癒系の魔法以外はあんまり力を入れて勉強する気はないし・・・オジョーだって火の魔法使うより楽だよね?」
「それはそのときに考えればいいことですわ。この間ムツキさんがやったみたいに」
「え?」
「子供の火傷を治したとき、変化の術を使っていましたわよね? 少しですけど煙が出ていましたわ」
「あ、ほんとに?」
(煙か。全然気にしていなかったな。もうちょっと慎重にならないと)
「ネコ同士でなければわからないくらいだとは思いますけれど。あのときもうまくごまかせたのだから大丈夫ですわよ」
「あの時大変だったから、今考えておきたいんだけどなぁ」
「もう! ムツキさんは心配性ですわね。・・・あ、なら、わたくしたちの村に伝わる秘伝の魔法ということにしたらいいんじゃありません? 人間たちは、秘密や特別が好きみたいですし」
「秘伝か・・・うん、いいね! それなら詳しいことも話さなくてすむし。ありがとう、オジョーに相談してよかったよ」
「お役に立てて光栄ですわ」
「よし、そうと決まれば心置きなく火の練習ができるね。やっぱり攻撃の手段はきちんと持っておきたいから、よかったよ」
マグロさんまでとはいかないが、何かのときに武器になる程度の威力に鍛えておいて損はないはずだ。
こうして、わたしたちの日課に火を吹く練習が加わった。
もちろん、言い訳ができたとはいえ人に見られないに越したことはないので、オジョーと二人のときにこっそりと、だったが。




