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猫と人の関係

 最初に来た時には人間の姿で通った道を、今日は猫の姿で歩く。

 道がわかっていることもあって、周りを見回す余裕も出てきた。


(こうして見ると、確かに猫が少ないな)


 それに、人の方も猫に対しての反応が薄い。わたしが生まれた国では、町の中に当たり前のように猫がいたし、少し歩くとだれかしら声をかけてきたりしたものだ。猫の方でもあの宿屋でわたしがやったように、戸口に向かって鳴くなどして食べ物をねだったりすることも普通だった。

 しかし、この街では猫と人はお互いが存在していないような態度である。なにかこうなるきっかけがあったのだろうか。


「おにぃさん、ちょっとちょっと」


 考え事をしながら歩いていると、横から声をかけられた。そちらのほうを見てみると、狭い路地の中で金色の目が光っている。


「おにぃさん、さっきボスに面会いってただろぅ? この街、案内してあげようかぁ?」


 そう言いながら近付いてきたのは白地に黒ぶちの模様の入ったオス猫だった。


「ありがとうございます、でも、いいんですか?」

「なに、ちょうど暇していたところだ。代わりにおにぃさんがここにくる前にいた場所の話なんか聞かせてもらえるとありがたいがねぇ」

「えぇ、それくらいならいくらでも。楽しいかは分かりませんが」

「国が違えば文化も違う。面白くないなんてことがあるかいな。よし、じゃあ交渉成立だ。ついて来な」

「よろしくお願いします、えっと」

「あぁ、自己紹介がまだだったなぁ。おれはササミだよ、おにぃさんは?」

「ムツキです」

「よろしく、ムツキ」

「はいよろしくお願いします、ササミさん」

「さん、なんて堅苦しい言い方するなよぉ。ただのササミで十分さ」

「わかりました、ササミ」

「おっと、敬語もなしで頼むよ、息が詰まるからなぁ」

「・・・わかったよ」


 ササミさんは相当話好きらしく、目に付くもの何でも説明してくれた。

 特に猫が嫌いな人間の住む家や、人目につかない隠れ場所。おいしいネズミが獲れる路地。


「ねぇ、ササミ。どうしてこの街は猫と人間の距離が遠いのかな? ぼくがいたところはもっと共存していた感じがするんだけれど」

「あぁ~、それな。うん、昔はこんなでもなかったんだけどなぁ。ほれ、うちのボスって若いだろう?」

「うん」

「あれ、先代、つまりボスの親父さんが亡くなったからなんだが、それが人間の馬車に轢かれたケガがもとでなぁ。そこからボスの人間嫌いはきてる。まぁ、人間が技術的に優れているのは確かだから、まったく離れようとはしないけど、必要以上の干渉は避けるようにしてるのさぁ。で、事故の後怒り狂った今のボスが仲間を引き連れて人間を襲撃したもんだから、あっちのほうでも猫は凶暴、手は出しちゃなんねぇって話になったみたいだなぁ」

「なるほどねぇ。それで特に支障はないの?」

「そうだなぁ。どうしても知りたいことがあれば人間に化けてもいいしなぁ」

「確かに。ぼくたちなんにでもなれるからね」


 猫の姿にこだわることもないか。動物好き、猫好きとしては、そして、猫を助けようとして死亡した身としては複雑な思いがあるが。


「さて、おれの話はこの辺にして、次はムツキの話を聞かせてもらおうかぁ」


 最初に言っていたとおり、ササミはわたしの話を喜んで聞いていた。

 特に、宿屋でご飯をもらいすぎて困ったときの話なんかしたときには


「いいなぁ、おれもそっちの国へ行こうかなぁ」


 なんて羨ましそうに言っていた。


 そうして話しながら歩くうちに、いつの間にか神殿の前に着いていた。


「お、着いたな。じゃぁおれはこの辺で。また縁があれば会おうなぁ」

「うん、色々教えてくれてありがとう。あ、そうだ、ぼく、魔法である程度の傷なら治せるから、もしもケガしたら来てくれればいいからね」

「ありがとよぅ。そんじゃ、またなぁ」


 尻尾をピンと立て、去っていく後姿をしばらく眺めてから、わたしは着替えを隠した場所へと向かい神殿へともどったのだった。

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