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街とボス猫

 オジョーと連れ立って神殿を後にし、人目につかないところで猫の姿になる。


「あぁ、やっぱりこちらの姿の方が落ち着きますわ。本当は元の姿に戻れるのが一番なのだけれど」

「ここで戻ったら大変なことになるからね」

「わかっていますわ! ちょっと言ってみただけですわ」


 そうだろうか。ここに来てからのオジョーの言動を見ていると、うっかり戻りかねない。

 しかし、本人が分かっているというのならしつこく言ってもあまり意味がないだろうし、せいぜいこちらが気をつけて見ていくとしよう。

 オジョーに知られたら怒られそうなことを考えながら、着ていた服を近くに隠し、街へと向かう。


 道中、オジョーにこの街のボスについて少し教えてもらった。

 ここのボスはメスネコで、名前はミルク、普段はあまり人目につかないところで過ごしているということ。

 もともとは彼女の父親がボスをしていて、地盤を継いだかたちになるということ。

 命もまだ3つ目で、これはボスとしてはかなり若い方だということ。


 歩きながらなので、オジョーの興味が移ると話も飛び飛びになり聞くのが大変だったが、要約するとこれくらいのことが分かった。


「さぁ、着きましたわ」

 オジョーに案内され着いたところは、船着場の近くの倉庫街、その奥のほうの人気のない一角だった。


 そこには十匹ほどの猫が集まっており、人間が見たら“猫の集会”と呼ぶであろう様相だった。

 その中でも、一際高い場所に座っている猫が、ミルクさんだろうか。

 すらりとした短毛。やや茶色がかった白い体に、手足や尻尾の先、それから顔の真ん中が茶色という特徴的な模様。


(シャム系か。綺麗だけれどきつそうだな)


 その猫が、ゆっくりとこちらを見下ろし口を開いた。


「オジョーちゃん、おかえりなさい。その子が探していた男の子かしら?」

「はい、ミルクさん。おかげさまで無事ムツキさんと会うことができました。感謝いたしますわ」

「どういたしまして。さて、初めましてね、ムツキさん」

「初めまして、ミルクさん。ご挨拶が遅れて申し訳ありません」

「別にかまわないわ。この街の中にはあまり猫がいなかったでしょう?わたしたちは普段あまり人とは関わらないように生きているから。特に用がなければわざわざ探そうとは思わないでしょうしね」


(正直まったく気にしてなかった。魔法の勉強に夢中で)


 口には出さなかったが、なんとなく雰囲気を察したのだろう。ミルクさんはきゅっと目を細めて、


「わたしたちも、こちらに害が及ばない限りあなたが何をしようが特に興味はないわ。まぁ、こうして会ったのもなにかの縁。困ったことがあればここを訪ねてきてもいいわよ」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

「じゃあ、わたしはもう行くわ。オジョーちゃん、今日からの寝床なんかも案内するからいらっしゃい」

「あ、はい! ではムツキさん、また後で」

「うん、ぼくは先に戻っておくよ」


 ふわりと飛び降りさっさと歩いていくミルクさんの後ろを慌てて追いかけるオジョーに声をかける。

 きつい感じではあるけど悪い(ひと)ではなさそうだな。


 さて、久しぶりに猫の姿で散策しながら戻るとしようか。

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