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再会

 マリアさんに基礎を習い、自分でも執行錯誤しながら、わたしは順調に魔法を習得していった。

 メジも学校で習ったことを教えてくれるので、回復系の魔法の息抜きに練習していたらの間にか攻撃系や補助系の魔法もいくらか使えるようになっていた。教えてくれた本人よりうまいとまた拗ねられたりしては困るので、使って見せることはしなかったが。


(わたしも、人間的気遣いをできるようになったものだ)


 ネコ生活で鈍っていた対人スキルも随分ともどってきたのではないだろうか。

 そう思っていたある日だった。


「おーい、ムツキちゃん、ちょっと!」

「はい! なんですか?」


 神殿の手伝いをしていた時、テオドールさんから呼ばれて行ってみると、


「あ、ムツキちゃん、この子がね、君を探していたみたいなんだけど」


 テオドールさんの隣にいたのは、金髪縦ロールの豪奢なドレスを身にまとった少女。


「ムツキ、さん?」


 その子は少し戸惑った様子で近寄ってくると、


「あぁ、確かにムツキさんですわ。今は女の子の姿なんですのね。もう、随分と探しましたのよ!」


 そう言って、頬を擦り付けるようにして抱きついてきた。

 そして、近づいてきたときに感じたにおいでわたしにもそれが誰だかわかった。


「オジョー!? どうしてここに?」


 そう、それは寺で別れたはずのクラスメイト、オジョーだった。


「どうしてって、もちろんムツキさんを追いかけて来たんですわ。ライバルであるわたくしを放って、あんな突然にいなくなってしまうなんて! せっかくこんなに上手に化け・・・」

「うわっわっ!?」


 オジョーがさらっと秘密漏洩しかけるので、慌てて口を塞ぐ。


「オジョー、えっと、長旅で疲れたろうから、とりあえず部屋に案内するよ、話はそこでまたゆっくり。すみません、テオドールさん、いいですか?」

「ああ、そうだね、ゆっくりしてもらうといいよ。なんなら今日は泊まって行ったらどうだい? 彼女、親御さんは?」

「そうですね、あとで確認しておきます。では、失礼します」


 もごもご言っているオジョーを引っ張り、部屋まで可能な限りはやく戻る。そこでようやく口に当てていた手を離すと、


「ムツキさん! ひどいですわ!」

「オジョーこそ、ぼくたちがネコだってことがバレたらどうするつもりなの!」

「あら、わたくしがなにか?」

「化けるって言いかけてたよ!」

「そうでしたか? でも、気にしすぎではないですか? 人間はそんなに敏感ではないでしょう」


 いや、テオドールさんはあれでなかなか鋭いところがあるし、なにがきっかけになるかわからない。


「とにかく、人と暮らすつもりならもっと気をつけないと。オジョー一匹(ひとり)の問題じゃないんだからね」

「・・・わかりましたわ」


 まだ完全には納得したようではなかったが、これで少しは気をつけてくれるだろう。


「それで? どうやってここまで来たの? 誰かといっしょじゃないの?」

「お父様の口利きで、船に乗せていただきましたの。お父様は人間にも顔が広いですから。そのあとは、このあたりに最近来たネコの情報を聞いてきたんですわ。こちらでの滞在先も用意してもらいました」

「そう、じゃあ宿の心配はないんだね」

「でも、今日はここに泊まらせていただこうと思います。ムツキさんともゆっくりお話したいですし」

「えぇ!? まぁいいけど・・・まさか今発情期じゃないよね?」

「大丈夫ですわ! それに、もうコントロールも完璧ですから!」

「そう。なら安心だね」

「それよりムツキさん、このあたりのボスにまだ顔を見せていないでしょう? 一度挨拶しておいたほうがいいですわよ。明日、わたくしが戻る時に一緒に来られるといいですわ」

「あぁ、ありがとう。そうさせてもらおうかな」


 魔法の練習が忙しかったし、ネコの世界は縄張りを守っていれば顔を合わせなくても特に問題はなかったので、挨拶なんて考えていなかった。しかし、今後のことを考えると、情報収集をするためには繋がりを作っておいたほうがいいだろう。


「では、今日はゆっくりと話を聞かせてもらいますわよ。わたくしを置いていってから一体どんなことをしていたのか」

「うん、オジョーの話も聞かせてよ」

「えぇ、わたくしがどれだけ成長したか教えて差し上げますわ」


 その後、マリアさんとテオドールさんに改めて挨拶をし、オジョーは神殿に泊まっていく許可をもらった。

 みんなでの食事のあと部屋に戻ると、堰を切ったようにオジョーは喋り始めた。わたしが寺を離れてからのみんなの様子や、進級のこと。新しいクラスメイトのこと。わたしとは違い、オジョーは中級や上級クラスでもそれなりの交友関係を築いてきたようだ。その話の中で、わたしが中級などのクラスメイトから意識されていたという情報があり、少し驚いたりもした。

 オジョーの話が一段落ついたときには、かなり夜も更けており、オジョーに


「さぁ、次はあなたの番ですわよ!」


 と言われたが明日も朝が早いので、


「今日はもう遅くなっちゃったし、また今度にしようよ。オジョーも疲れが出てくるだろうし、しばらくはこっちに居るんでしょ?」 


 と後日回しを提案した。


「では、これだけ確認させていただきますわ。ムツキさんはこちらで魔法の勉強をしているんですわよね?」

「うん、そうだよ」

「わかりました、ではわたくしも魔法を習うことにしますわ」

「え?! なんで?!」

「なんでも、ですわ!」


 よくわからないが、オジョーにはオジョーの考えがあるのだろう。


(まぁ、邪魔されなければ別にかまわないけれど)


「そう。じゃあ一緒に頑張ろうね」

「えぇ、明日からまたよろしくお願いしますわ」


 その夜は、久しぶりに猫の姿で活動する夢を見た。そして、朝起きるとオジョーと二匹(ふたり)本当に猫になって布団の上で丸まっていたのだった。


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