ライバル?
あれから、メジはちょこちょこやってきては一緒に魔法の練習をしようと言ってくるようになった。
平日は学校のようなところに行っているらしく、夕方に少し顔を出すこともある程度だったが、休みの日には必ず
「おい、ムツキ! 特訓しようぜ!」
こうして現れる。
マリアさんたちも子供同士の交流をほほえましく思っているのか、よっぽどのことがなければ行っておいでと送り出される。
確かにメジはすじがよく、わたしのアドバイスを受けてスランプを脱出してからはまたぐんぐんと実力を伸ばしていた。
まだわたしと同等とはいかなかったが、地力が違うのでこれは仕方ないだろう。そう思っていたのだが、メジはそうではなかったらしく、
「なんで追いつけないんだ~!」
ある日の練習終わりに、ひっくり返って叫んでいた。
(もとが違うから、などというと怒るんだろうなぁ)
「でも、メジもかなり上達したじゃないですか」
「なんかその、上から言ってる感じが腹立つんだよな~」
「まぁ、あなたより実際上にいますのでね」
「くっそ~! 見てろよ、今におまえより上達してやるからな!」
「頑張ってください。わたしは別にあなたが上だろうと下だろうと気にしませんので」
自分が蘇生魔法を使えるようになればそれで。
「ちくしょー。あ、そうだ。ムツキ、回復系の魔法以外って使えるのか?」
「いいえ。教わったこともありませんし」
「へへ、ならおれのほうが上だな! おれは学校で水や火の魔法も習ってるからな!」
「へぇ、学校で? それで、どんな魔法が使えるんですか?」
「えっと、水を出せる」
「ほう」
「火も出せるぞ!」
「なるほど。それは便利ですね」
(攻撃魔法なら特に必要ないかと思っていたが、ただ単に水や火を出せるというのであればなにかと使えるかもしれないな)
「おう! どうしてもって言うならおしえてやってもいいぞ」
「では、メジが学校で学んできたということをわたしにも教えてください」
「しかたないなぁ」
そう言いながら、メジはめちゃくちゃ嬉しそうに教えてくれた。
「なんでも、基本は一緒なんだ。必要な場所に、必要なものを想像する。こうなって欲しい、こうあるべきとつよくおもうことが大事なんだよ」
「と、先生が言っていたんですね」
「う、うるせー! そんなこと言うともうおしえてやんねーぞ」
「失礼しました。続きをどうぞ」
「ふんっ。・・・たとえば、ここにコップがあるとする。そこに、水が入っているとイメージするだろ」
「はい、それで?」
「そこで、呪文を唱える。〈水〉! 以上だ!」
「火の場合は?」
「だいたい一緒だよ。呪文が〈火〉になるだけ」
「結構簡単なんですね」
「やり方は簡単だけどほんとに使えるようになるには練習が必要なんだぞ。これはまだ基礎だって先生も言ってたし」
「そうですか。教えてくれてありがとうございます。次回はそちらの練習も少ししてみましょうか」
あとで一人でもやってみようか。火は吹けるのであまり必要ないが、水は使い勝手が良さそうだ。
「そうだな! また新しいこと習ったらおまえにもおしえてやるよ!」
「えぇ、よろしくお願いします。それと、お前はやめてください」
それから二人で神殿へ帰ると、ちょうどそこにマリアさんが居た。
「二人とも、すっかり仲良しねぇ」
「お互い利益のために一緒に行動しているだけですよ」
「あら、そうなの? もうお友達になったのかと思っていたのだけれど」
「友達じゃないよ、マリアさん。おれたちは、ライバルだよ!」
「まぁ、ライバル? じゃあ二人ともがんばらないといけないわねぇ。お手伝いもしてくれるかしら?」
「うん!」
「わたしは別にライバルとは思っていないんですが。ここに居させてもらっている以上手伝いはそもそも仕事のうちです」
しかしその日は、マリアさんに上手くのせられたメジが張り切ってくれたため、わたしの仕事はほとんどなく、そして、何かできるたび自慢げな顔をしてくるメジが少し鬱陶しかった一日だった。




