学習と復習
メジは、一番だったと言うだけあって年の割には(今年8歳になったとのことだ)魔法をよく扱えていた。
魔力量の問題なのか、疲労度が高いと〈癒し〉で全回復することができないこともあるようだが、成長すれば魔力も増えるであろうし問題はなさそうだ。
しかし、〈治癒〉の段階でつまづいたらしく、小さな傷でも治せるときと治せないときがあるらしい。
オオカミたちのあとに順番待ちをしていた、ウサギやリスといった小動物たちへ実際に魔法をかけているところを見ると確かに、傷が塞がったり出血が止まるだけだったりと不安定だ。
「うーん、なんでしょうね。治った後のイメージはきちんとできているんですよね?」
メジが治せなかった子たちに改めて魔法をかけながら、原因を考える。
「とうぜんだろ。でも、治らないんだ」
「そうですか・・・。よし」
ピッ
手持ちのナイフで指の先を少し切った。
「え!? おまえ、なにしてるんだよ!?」
「自分で体感すればなにかわかるかと。さあ、傷ですよ。はやく治してください」
「な、なんで、おれのためにそこまで」
「端的に気になるからです。あなたのためというよりは、もはや自分のためですね。あと、おまえはやめてください」
まぁ、ダメなら自分で治せばいいだけだし。
「さ、とりあえずいつもどおりでいいですから」
「う、うん。大いなる神よ、今その慈悲によりこの者の傷を癒したまえ。〈治癒〉!」
傷口に手をあて、呪文を唱えるメジ。
暖かい感覚に包まれる指、そして、その感覚は手全体に・・・
(ん? キュアってこんな感じではなかったような。なんだろう、これじゃまるでヒールみたいな・・・なるほど。そういうことか)
「わかりました。メジ、おそらくあなたは魔力のコントロールが出来ていません」
「魔力のコントロール?」
「そうです。ヒールの場合は体全体を包み込みますが、キュアでは傷口に集中して魔力を集める必要があるようです。それができないから魔力が分散して傷を治すことができないんです」
自分では意識せずにやっていたが、おそらくそういうことだろう。
「意識を傷に向けて、集中させてみてください」
「魔力を集中・・・」
「そうです」
「大いなる神よ、今その慈悲によりこの者の傷を癒したまえ。〈治癒〉!」
シュウゥゥ
今度は、みるみるうちに傷が塞がっていく。
「やった! できた!」
「いい感じですね。その感覚を忘れないうちに、もう少し練習しておきましょう」
その後、動物たちの傷をいくつも治し、小さな傷なら毎回塞げるようになったところで今日の練習は終了とした。
「あ、あの、ムツキ。ありがとう」
「いえ、わたしも新しい発見がありましたから。あ、それから、動物たちの傷を治していることは皆には内緒にしてくださいね」
「う、うん。ほんとに悪いことはしないんだな」
「きちんと言い聞かせておきますから、大丈夫ですよ」
「わかった」
「二人だけの秘密です」
「ひみつ・・・」
男の子に対する魔法の言葉、“秘密”。
これでメジが自分からペラペラ話すことはないだろう。もう少し大きければ、既に自分が共犯となっていることを分からせて脅しにすることもできるが、今はこちらのほうが確実性が高いはずだ。
お互いに収穫もあったし、口止めまでできた。一石二鳥以上の収穫のある練習だったと言えるだろう。
「それでは、また」
「うん、また明日!」
「え、あぁ。また明日」
また今度、機会があれば。くらいの気持ちだったのだが。
そうか、また明日か・・・。
うん、悪くない、かな。
元気に走っていくメジの後ろ姿をみると、自然にそう思えた。




