神殿は戦場?
(・・・お姉さん、一度見ておいでって、これは)
わたしの目の前では、血だらけの男が押さえつけられていた。
その足は片方が切断されており、どうやらその傷をつなぎ合わせようとしているようだったが、男が暴れるためなかなかうまくいかないらしい。
「はぁい、じっとしててね~。じゃないと変なくっつき方しちゃうわよ~」
優しげな口調でその実容赦なく傷口に手を触れているのは、シスター服の女性だった。
それでもなお男が暴れ続けていると、
「ん~、仕方ないわねぇ。イザベル、お願い」
「はい」
頭の方を押さえていた人物(声からするとこれも女性)が、えいっと軽い感じで男を締めおとした。
(えぇぇぇぇ?!)
「やっと静かになったわねぇ」
そう言うとシスターは何事もなかったかのように呪文を唱えだした。すると、その手が淡く光りだす。
(いや、これ普通の子供が見たら一生もののトラウマになりかねない光景だと思うのだが)
しかも、よく見るとあれ、傷に触れているなんてものではなく、がっつり傷の面に触っている。
傷口を合わせて、端の方から満遍なく触っていくとそこからくっついていくようだ。
・・・しかし結構時間がかかるものなんだな。もう10分くらいはたっていそうだが、まだ半分も付いていない。
「そこで何をしているのかな?」
「うわっ!?」
前の光景に集中していたところに突然後ろから声をかけられて驚いてしまった。
振り向くと、いかにも聖職者といった格好をした男性がにこやかに佇んでいる。
「うちになにか御用かな?お嬢さん」
「あ、あの、わたし、治癒魔法が使えるようになりたくて」
「君ひとりかい?親御さんは?」
「わたしひとりできました。おかあさんたちの了解はとってあります!」
「そうかい・・・。まぁ立ち話もなんだしとりあえず中に入ろうか。話はそこでゆっくり聞くよ」
「はい、お願いします」
わたしの方でも聞きたいことはあるし、疲れも少しある。休憩できるならありがたい。
「ところで君、あの光景を見て平気だったのかい?」
男性は建物の中を指して言った。
「あ、全然問題ありませんでした」
人間の時には、動物の血はいくら見ても平気だったが人の流血はやっぱりちょっと引いたものだったが。
(これはもしかして、心までネコになりつつあるということなのだろうか。いけない、やはり少しでも早く蘇生しなければ!)
こうしてわたしは、決意も新たに神殿へと足を踏み入れたのだった。




