海の男、マグロ
「うわ~、すごいなぁ」
オショーさんとともに着いた港。
そこには沢山の船が並んでいた。
大小も、姿形も様々な中で、一際大きな船に向かってオショーさんが声をかける。
「おーい、マグロ君、居るかの」
その声に、上の方から返事が。
「おー、オショーさん!」
その声とともに、船先からひらりと飛び降りてくる影があった。
「マグロ君、元気そうだの?」
オショーさんがマグロと呼んだそのネコは、大柄な三毛猫だった。
「ああ、オショーさんも変わりなさそうだな! お、こっちはだれだ?」
「こっちはムツキ君だ。大陸へ渡りたいと言っておるので、君なら力になってくれるのではないかと思ってな」
「はじめまして、ムツキです。よろしくお願いします」
「マグロだ、よろしくな!」
「マグロ君はあちこちの船に乗って世界中を旅しているんだよ」
「どこの船でも猫は歓迎されるが、特に俺は引っ張りだこなんだぜ」
(でしょうね。というか、むしろどこも手放したくないのでは?)
わたしのいる世界では、オスの三毛猫は、性染色体がXXYの時にのみ生まれるため、非常に珍しい存在だ。そしてかつては、船乗りにとっては船が沈まないお守りとして崇められ、高額で取引されていたという。
「子供もできないから、一匹で好きにさせてもらってるよ」
(あ、それも変わらないんだ)
「捕まえられたり、無理やり乗せられそうになったりはしないんですか?」
「人間に俺を捕まえるなんてできっこないさ。変化してしまえば見つかることもないしな」
「なるほど」
(もしかしたら、船同士で協定のようなものが出来ているのかもしれないな)
神出鬼没の守り神なら、来てくれたらラッキーといったところか。
「次に大陸へ行くのはあっちの船だな。出発は明後日。準備は間に合いそうか?」
「大丈夫。ですよね、オショーさん」
「うむ、少し忙しないがなんとかなるだろう。では、一度もどるかの」
「じゃあ明後日の朝、ここに集合だ。大陸までは一緒に行ってやるよ」
「はい、ありがとうございます、お世話になります」
(マグロさん、いい人そうでよかった。ただ)
「すみません、朝って何時頃ですか?」
「え? 朝は明るくなったらだろ」
「・・・」
やっぱりネコはネコだった。




