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卒業、そして大陸へ

 人型への変化にも慣れ、その姿も自分自身である成人女性に加え、子供、男性(これはとりあえず夫の姿を参照した)と、バリエーションも増えてきたころ。

 

「そろそろムツキさんも卒業でしょうか」


 わたしの変化の様子を見ていたネコジャラシ先生が言った。


「本当ですか!?」

「えぇ、座学の授業も真面目に受けていますし、課外授業でもしっかりとした成果をあげていますしね」


(やっと、やっと先へ進める!)


「ただし、しばらくの活動はこの近くの町で留めておいてくださいね。何かあるといけませんから」

「え!? でも先生、ぼく大陸へ行きたいんです! 魔法が勉強したいんです!」

「魔法ですか・・・。しかし、いきなり一匹(ひとり)で海を渡るというのも・・・」

「どうしたんですかの、ネコジャラシ先生」

「あ、オショーさん。ムツキさんが大陸へ渡って魔法を学びたいと。しかし一匹(ひとり)で行かせるわけにもいきませんし」

「ふむ、ではマグロ君に任せてはどうかの。ちょうどこっちへ戻る頃ではないかの?」

「しかし、彼は船乗りですよ。船の上ではいいとしても、その先のことは」

「それでも、わしらよりはよっぽど知っていることも多いだろう。大陸にも何か、つてがあるかもしれんしの」

「・・・そうですね。ムツキさん、何かあればすぐに帰ってくるんですよ。決して無理はしないように」

「はい、わかりました」


(先生の言いたいことは、ね)


 多少無理しなければいつまでたってももとの世界に戻ることはできないだろう。


「では、マグロ君に会いに行こうかの」

「はい、オショーさん、お願いします」


 オショーさんと門へ向かう途中、オジョーに会った。


「あら、どちらへ行かれますの?」

「あ、オジョー。ぼく、そろそろ卒業できるらしいから大陸へ行く準備をしてるんだ」

「そ、卒業?! そんなの聞いていませんわ!」

「うん、ぼくもさっき聞いたからね」

「せっかく上級にあがれたと思いましたのに、またおいていくつもりですの」


(うーん、おいていくって言ったって、そもそも別に一緒に行こうとか言っていたわけじゃないしなぁ。正直一人のほうが動きやすいんだけれど、そういうと角が立ちそうだし)


「えーと、ほら、オジョーならまたすぐにこれると思って」

「ほんとうに?」

「うん、だから、大陸もぼくが下見しておくし、ね」

「ふーん。それでは仕方ないですわね」


(何とかうまくいったか。時間稼ぎにしかならないかもだけれど、今ごねられるよりはましだろう)


「あ、そうだ。オジョーにお願いがあるんだけど。ここを卒業するまで、時々でいいからゆりちゃんのところにぼくの振りをして顔を出してあげてほしいんだ」

「ムツキさんの振りをして?」

「急に姿を見せなくなると心配するだろうから、徐々に回数を減らすようにしてほしいんだ」


 何度も通ううちに、自分の子が少し大きくなったらこんな風になるのか、などと考えていると情が移ってしまった。できればあまり悲しませたくはない。


「なんだか手間がかかりますわね」

「お願いだよ。こんなことオジョーにしか頼めないんだ」


(一番化けるのもうまいし、わたしの宿屋での様子もよく知っているし)


「わ、わかりましたわ。あなたがそこまで言うのでしたら仕方ありませんね」

「ありがとう! オジョーはやさしいね」


 自分で言っといてなんだが、こんな面倒そうなこと、よく引き受けてくれたものだ。

 とにかくこれで心配もなくなった。

 

 さあ、出発の準備だ。

 

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