化け学の授業~上級編~
「さて、このクラスでは、いよいよ人間に化ける方法を練習していきます」
そう言われて、期待して覗いた教室の中だったが
「あれ?」
中級のように、化ける練習をしている生徒はほとんどおらず、みな机に向かって熱心に本を見たりなにかを書いたりしているようだった。
「先生、なにか今までのクラスと雰囲気が違いますね?」
「ええ、ムツキさん。人間に化けるのには、また新しい要素が必要なのです。その要素とは」
「要素とは?」
「個性です」
「こせい?」
「そうです、今までは、“いかにそっくりに化けるか”が重要でしたが、人間は見た目を個体識別の判断材料としているため、あまりにそっくりな人間がいると警戒されたり怪しまれたりするのです」
「はぁ」
ん~まぁそうかな。もしここにいる全員が同じ顔だったらそりゃ異様以外の何者でもないわな。
「ですから、人間としての基本を押さえつつ、個人としての特徴を付け足す、想像力が必要なのです。ここにいる皆さんは、今自分が化ける人間をどのようにするかデザインしているところです」
なるほど、だから化け学なのにみんな座学のようになっているのか。
けれど、これはチャンスなのではないだろうか。わたしは、自分の容姿を覚えている。そして、これはわたしのオリジナルだ。だったら、考えるまでもない。
「先生、僕、やってみてもいいですか」
「え? まぁいいですが・・・。難しいと思いますよ」
「ありがとうございます、いきます」
人間だった頃の自分を思い出す。
ぽふんっ
「っ!?」
先生が息を呑む気配に、思わず閉じていた目をゆっくりと開けると、鏡の中に見慣れた、今では少し懐かしく感じるわたしがいた。
黒くて長い髪、日にあたらずいたために白い肌、黙っているときついと言われる顔。
起伏の少ない(それでも子供を産んでから少しはボリュームのついた)身体。
この世界に来るまで毎日見ていた姿。
「小さくなる授業の時といい、あなたにはいつも驚かされますね」
「ありがとうございます」
「・・・どういたしまして。どこかで見た人間ですか?」
「いいえ、なりたい姿はここに来る前から考えていたんです」
「そうですか・・・。見たところ不備はないように思えます。本当に素晴らしいですね。あとはその姿を長時間保てるようにさえなれば人間の町にも行けるようになりますよ」
「本当ですか! 頑張ります!」
「座学もお願いしますね」
「あ、えぇ・・・」
返事が悪かったのには訳がある。人間として生活するのだから、人間の生活などを学ぶのは当然で、わたしも別にそれ自体に不満はない。
ただ、内容がなぁ。




