マンツーマンの時間
中級に上がってしばらく。わたしは瞬時に先生そっくりに化けられるようにまでなっていた。
オジョーもなかなか上がってこないし、どこかのペアのうち片方が次の課題に進んであぶれるということもなかったからだ。
「うーん、もう私では練習になりませんね」
「そうですね、正直先生の顔は見飽きました」
「ムツキさん、それはちょっと正直すぎますね」
「そうですか、すみません。でもそろそろ別のものを練習したいです」
「では、生き物以外を練習していきましょうか。とりあえずここにある机はどうでしょう」
「分かりました」
まずは見た目をよく確認。それから意識するのは材質、質感。
ぽふんっ
「・・・すばらしいですね。見た目はほぼ完璧といっていいでしょう。後は、・・・。ふむ、この硬さ、ひんやりとした手触り、初めてでこの再現率とは」
「ありがとうございます。イメージのコツが掴めたので」
そう、外見だけを再現しようとすると、他のところが似ても似つかないものになってしまう。大切なのはそのものの本質を理解すること。
それがわかればこれくらいは簡単だ。
「この調子なら、すぐに上級にあがれるかも知れませんね」
「本当ですか❗」
「まだ課題は残っていますよ。ほら、この下のほうとか」
「あ」
足の裏に肉球が残っていた。