化け学の授業 その2
初回の授業で完璧にではないにせよ二人とも変化に成功したため、次からは化け学初級クラスへの合流となった。
ここでは、それぞれ化ける、もどるを繰り返して精度を高めていくらしい。毎回同じように小さくなる、大きくなる、というのをクリアするのが進級の条件だ。見たところ、小さくなるのを練習しているのが6割、大きくなるのが3割、寝ているのが1割。
うん、まだましかな。人間でもサボりっているしね。ちゃんと練習しているのがいるだけでもすごいよね。たとえ、1回1回の間の休憩がものすごく長くても。
「さて、ムツキさんは自分のままで小さくなる練習ですね」
「はい」
「しかし驚きました。憧れが強すぎるとあんなことが起こるとは」
「僕もびっくりしました。今度からは気を付けます」
「そうですね、自分以外の姿になれるのは素晴らしいのですが、きちんとコントロールできないと意味がないですからね」
そう、みぃの一件をわたしは、以前会って憧れていたネコになってしまった、ということにしていた。
ネコたちは基本的に他に興味がないことが多いので、少し不思議そうな顔をされたがまぁいいかと流された。
そんな中でやたらわたしを気にしているオジョーは例外的な存在といえる。
「オジョーさんは」
「えぇ、意識するところがわかっていれば、すぐにでもできるようになりますわ」
「素晴らしい気合ですね。ですが、力みすぎはよくありませんよ。ほら、彼のように」
先生がさした先では、唸り声を出しているネコが、くちゃくちゃになっていた。
「変に力が入るとああなりますから。ほら、君、力を抜きなさい」
「ぐぐぐぅ~」
「わ、わかりましたわ」
少し引いた様子のオジョー。
「それから、意識するのは外側だけではなく中身もです」
「中身?」
「内臓です。そこを忘れると、大変なことになることがあります」
・・・確かに。内臓そのままガワだけ小さくなったら、風船みたいにパァンと。下手をすればスプラッタである。
「心してかかりますわ」
「ムツキさんもですよ」
「えぇ、はい」
「では、始めてください。自分のペースでいいですからね」
そういうと先生は、クラスの見回りをはじめた。
さてと。このまま小さくなるにはどうしたらよいか。実はやってみようと思い付いたことがある。
ヒントは、趣味で行っていたニードルフェルトだった。もこもこの毛玉を、針でつついて形を作っていくものだ。
あんな風に、全体が少しずつ縮んでいくイメージにすれば、前回のように別の姿になってしまうこともないだろう。
チクチクチクチク・・・。先生に言われたように、内臓にも気を付けながら・・・
ぽふっぽふっぽふっ
目を開けてみると、今回は色も変わらず小さくなっている。けれど、
「あら、ムツキさんずいぶんとかわいらしい姿に」
「うーん」
フェルトのイメージが強すぎて、デフォルメされたぬいぐるみのようになってしまった。
「あなたは毎回変わった失敗の仕方をしますね」
先生は少しあきれたように言った。
変化、なかなかに奥が深い。