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新しい名前

「さて、そろそろオジョー以外も人間のときの呼び名を決めないとの。早めになれておくほうがよいからの」


 ある日、オショーさんがそう言った。

 ああ、そういえばそうだったな。

 わたしはもともとの名前”ムツキ”を使うつもりだ。事前に辞書で調べたが、この世界におけるおかしな意味もなかった。と言うか、そもそも載っていなかったので。一月、二月という言い方はあるようだけれど。

 ちなみにオショーさんの”チクワ”は、

 

 すりつぶした肉を棒に塗りつけて、焼いたり蒸したりして作った食べ物。


 だった。

 あと、"お嬢様"は


 目上の人の娘の呼び方。


 ・・・・・・まずいかなぁ。いや、たぶんアクセントが違うし、大丈夫! と信じよう。

 しかしなぜ、オショーさんは食べ物の名前を選んだのだろうか。この世界の人間はそれが一般的なのか? 借りてきた本を読む限りではそうでもなさそうだったが。


「前にも言ったが、人間は色や見た目で名前をつけることはあまりないの。ではどのように決めているのかというと、どうやら親が自分の好きなものの名前をつける、もしくは既にある名前をよく使うようだの。あるいは独自性のために今までにない言葉の並びを考えることもある。ただ、好きなものの場合は我々の言葉のままでは人間には判らんからの、翻訳が必要だが」

 

 そういう理解か。うーん、確かにそうだけれど・・・


「へぇー! 自分の好きなものを名前にできるのか」

「じゃあぼく、ゴハンがいいなぁ」

「・・・睡眠」

「僕ボール! ボール!」


 違う! これやっぱり違う! こんなんで行ったら絶対変だと思われるよ! 


「うむ、残念ながらどれも今、寺の中で使われておるの。同世代で同じものを使うとややこしいからの、できれば別のものにして欲しいの・・・」

 

 使ってるの⁉ 今までよく大丈夫だったな!


「え~・・・あ、そうだ。シロ、お前物知りだし、オジョーみたいに僕らにも名前考えてよ」

「おお、それはいい考えだの。君は独創的な名前のセンスをしておる」


 期待の目を向けてくるみんな。


「え、いや、それは」

「大丈夫だって。どうせ僕らが考えた名前だって、人間の言葉に変えるからよくわからないし」

「ほんとにいいの?」

「うんうん。どうしても嫌だったら自分で考えるし」

「じゃあ最初からそうしてくれれば」

「まあまあそう言わず」

「もう・・・」


うーん、どうしようか。もう変な意味だけなければいいかな。わたしネーミングセンスとかないし、そもそもこっちの名前まだよくわからないし。辞書から適当に、あんまり使わない感じの・・・


「なら、グレーは・・・闊達」

「カッタツ?」

「元気があってハキハキしてるって感じだよ」

「カッタツ・・・うん、いい響きだ!」

「ぼ、ぼくもお願い」

「チャトラは・・・鼓腹とかどう?」

「コフク? なんだか美味しそうだね。ありがとう」

「クツシタも決めちゃっていい?」

「ん」

「えーっと、就床(しゅうしょう)

「なんかかっこいいな!」

「これでいいかな?」

「・・・うん」


 ふう、なんとか決まった。


「オショーさん、どうですか?」

「うむ、どれも聞いたことのない言葉だが、人間の辞書に載っているのなら問題ないかの」


 これが人間に本当に通じるのかはわからないけれど。

 もし、あまりにもずれているようならその時は変えればいいだろう。

 だよね?

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