ネコと人間
「オショーさん、ちょっといいですか?」
「うむ?」
「あの、人間ってどのくらいのおおきさなんですか?」
あの辞書からするとネコと人間の間には明らかにサイズの差がある。
「おや? シロくんは人間を見たことがあるのではなかったかの?」
「その、えっと、遠目に見ただけだったので・・・」
「ふむ、そうかの。今のわしがちょうど平均的なサイズだと思うぞ」
もしかして、わたしが思っているよりも人間は大きいのだろうか、と思い聞いてみたのだが違うようだ。
「じゃあ、人間がネコと思ってる別の種族がいるんですか?」
「これはまた妙な事を聞く。ネコといえばわしらのことしかないの」
「???」
「急にどうしたのかの?」
「あの、これなんですけど」
そう言って辞書を差し出すと、
「おや、人間の本だの」
「ここに、ネコは小さいと書かれていたので」
「なんと、これが読めるのか?!」
しまった、普通は読めないのか。
「こ、ここに来る前に勉強していたので!」
「・・・まあ読めて悪いことはないからの。しかし人間の言葉はかなり複雑なんだがの」
「そ、それで、どうしてネコが小さいことになっているんですか?」
「あぁ、それはの、我々が人間の村に行くときには小さくなっているからだの」
「え、そうなんですか?」
「うむ、大きいままでは魔物と思われて襲われかねんからの。人型になるほどの力がない猫又は小さくなって人の生活に紛れておる。人間はその姿を見てネコと言っておるわけだの」
「はぁ〜」
「もう少しすれば君もその方法を学べるはずだの」
「えっ?!」
「化け学の最初の課題だからの。クリアすれば人間の生活を見学に行くこともできるようになるぞ」
「本当ですか!」
「授業の一環だからの、遊びではないぞ」
「わ、わかってます」
だけど、思ったよりはやく人間に近づけるかも知れない。それまでにできるだけ情報収集をしておかないと。人間のことと、あと、さっきオショーさんがポロッと言っていた魔物についても。