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天体運航韻律再現譜 One of a Song of Imbolc  作者: 石田五十集(いしだ いさば)
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LEGACY-0018「MITHhing Link」

 仮に全生物種の同時発生を信じるとしても、蚕蛾の妖精が存在することの不自然さは解消されない。

 そもそも蚕蛾は人間が完全な家畜化に成功した唯一の生物なのだ。馬や豚を始めとする他の全ての家畜は人間の手を離れてもじきに野生に戻るのに対して蚕蛾は人間の介添えなしには餌の探索もせず、生物の最終目的であるはずの生殖行動でさえ自発的には行わない。異様に短い寿命も効率的な絹糸の生産のための品種改良の賜物である。もちろん家畜化される前の野生の蚕蛾もいるが、ファル・ティエランで見られるのは生態からしても絹の品質からしても品種改良された種であると考えて間違いない。だが当然ながら人為的な改良には人間の手が要るが、蚕蛾の妖精が島に現れる遥か昔、エデンの園が分離する前の時代に我々の祖先は姿を消している。そして何より妖精達は不完全ながらも(不完全?その言葉が適切であればだが)人間の形質を持って生まれ、我々よりずっと善良な人間性を具えている。人間がいない以上品種改良の担い手は衣を必要とする蚕蛾の妖精以外の妖精達とするしかないが、彼らを意図的に番わせたり個体を選別したりという作業を彼らが自ら思いつき行うとは到底考えられない。蚕蛾の妖精達は愚鈍な家畜とは訳が違うのだから。

 以上の点からしても蚕蛾の妖精は他の仲間とは出自が異なると見て良いだろう。その頃に人間の観察者が島に不在であったことは残念でならない。だが多少なりとも推測を導き出すなら彼らが太陽誕生祭で果たす役割が判断材料になる。その日、彼らは……


    『MITHhing Link』より、エドウィン・ヒューリックが記す

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