7
私用でゴタついてたらとんでもなく期間が空いてしまいました。すみません…
「フリック君……だったかな? 私と取引をしよう」
先程までの気弱な中年男といった、どこか親しみ易い雰囲気はどこにもなく、背筋が薄ら寒くなるような冷酷な瞳を向けながら、ゲオルグはそんなことを言い出した。
「お、お父さん……?」
突如豹変した父に、ロレンタは戸惑いがちに恐る恐る声を掛ける。が、ゲオルグは最早彼女に見向きもしなかった。その視線はただ真っ直ぐに、イヴに向かって注がれている。
「……取引って何だ」
「そこのお嬢さんを私に渡して欲しい。なに、悪いようにはしない」
おおよそ予想していた答えに顔を不快気に歪ませたフリック。だが彼が何かを言う前にゲオルグが手を振り上げ、制止させる仕草を取った。
「勿論見返りも用意している。私は研究をする傍ら、ここの施設の技術を用いた研究のための資金稼ぎもしていてね。君がちょっとした地方都市で小さな家を買って十年程度は悠々自適に暮らせる程度の金を用意している」
「やっぱり昔お前が会ったっていうのは、イヴのことだったのか……随分と景気の良い話だが、それだけの物を支払ってでも、あんたはイヴに何をさせたいんだ?」
「彼女は人類進化の重要な鍵だ。彼女を調べ上げ研究し、得られたデータを他者に転写すれば、人類の身体能力は飛躍的に上昇するかもしれない。……もう地上を我が物顔で跋扈する魔物共に怯えなくても済むような世になるかもしれないんだ!」
フリックはため息を一つつくと、未だにゲオルグを警戒している様子でフリックの服の裾を握りしめているイヴを庇うように身体の後ろへと隠し、ゲオルグへと向き直った。
「お考えは大層立派だがな……金だけでどうにかできるとでも思っているんじゃないだろうな?」
「おや、何か不服でもあるのかい? それだけの金があれば、君はもう冒険者として旅をする必要なんてなくなるだろう。君がどんな理由で冒険者に身をやつしているかは知らないが、日々の資金のやり繰りや魔物、時には人との命のやり取りをする生活には疲れただろう? 君は見たところまだ若い。いい加減そんな擦れた生活からは身を洗い、そろそろ堅実な方向へと身を振り直すべきだと私は考えるんだが、どうだろう?」
「余計なお世話だ……と言いたい所だが、まあ確かに、あんたの言う通り冒険者ってのも楽じゃないぜ? 色々な土地を見て回ってみるのは楽しいが、正直それに自分の命を幾度も危険に晒す程の価値があるのかってことを時々考えるのも事実だ。どっか安全な所で普通に生きるってのも、一つの生き方かもしれねえな」
静かに、淡々と語るフリックの言葉に、ゲオルグは同意するかのように頷いた。
「ああ。君は旅においての日々のやり繰りに頭を悩ませることも、生命の危機を感じることも無く穏やかに暮らすことができる。私は人類をより高みに導くための研究が進む。良いことずくめだとは思わないかい?」
「その通りだな。……と言うとでも思ったか!?」
フリックはゲオルグに右手の人差し指を突き付け、不敵に宣言を下す。
「ふざけやがって。黙って聞いてりゃ人の相棒を平然とした面しながら金で買おうとしやがって……! 悪りいがいくら金積まれようが、俺はイヴをお前に渡す気は毛頭ねえぞ」
堂々としたフリックの宣言に、ゲオルグは目を丸くしながら問いかけた。
「ほう……それは何故かな?」
「何故って当たり前だろうが。身内同然のやつを金で売り払えるか。イヴは俺の……」
そこまで言い掛け、フリックはふと、自分に向けられる一つの熱烈な視線に気づき、目線を隣に向けた。
「……」
見ると、ずっとフリックの服を掴んでいたイヴが、ひたすらフリックの方へと視線を向けていた。
「……」
その様子は、まるでフリックがその先に何を言うかを待ちかねているかのような……もっと具体的に言うならば、彼が自身の口から、自分のことをどう思っているのか直接的に聞くことができることを期待しているかのような、まさしく興味津々といった風な様子だった。
「……って何を言おうとしてたんだ俺は!? ああもうクソ! ……とにかく見てりゃ分かるが、こいつは明らさまにそっち行きたくなさそうにしてるだろうが! そんな訳だからお前にこいつは渡せねえ! 以上だ!!」
気恥ずかしさに顔を微妙に赤くし、未だ自分の服を掴んでしがみ付くようにしているイヴを指差しながら、やけくそ気味にフリックは叫んだ。
「すると……これは交渉決裂と見て良いのかな?」
「聞きゃ分かんだろ」
「そうか。それでは仕方が無いな。……この手はあまり用いたくはなかったのだが」
ゲオルグがいつの間にか手元に持っていた、一見黒い小箱のようにも見える機械を操作すると、ガタン、とどこかで何かが開くような音が聞こえた。しかし音が聞こえた以外に周囲に目についた変化は無く、フリックが訝しんだ瞬間、
「……!」
ゲオルグの背後にあった白い壁が突然ぽっかりと口を開けた。四角形に空いた穴の中は暗闇で満たされており、中に何が居るかは窺い知れない。
しかし、ひた、ひた、という静かな足音のみは聞こえる。やがて闇の中からぬっと姿を現したのは、
「何だこいつ……!」
暗闇の中から現れ出たそれは、異様な風体をしていた。
石膏のような真っ白な肌、天井近くにまで届く体格。それの姿は、あの白い化け物とよく似ていた。
ただし、今まで目にした化け物とは明らかに違う点も見受けられた。これまでの化け物はぶよぶよと極端な肥満体をしていたが、目の前に居るそれの体形はそれらよりいくらか細身であり、脂肪の代わりに鋼のような分厚い筋肉に全身を覆われていた。
「こいつは……成程読めたぜ。今までの化け物共、お前の人類進化の実験とやらの副産物か何かって訳かよ」
フリックは何かに気付いたのか、その目を僅かに鋭くさせながら言った。
「ははは、副産物とは随分丁寧な言い方をしてくれるね。そんなものじゃないさ。こいつらは只の『失敗作』。私の研究に尽くしてくれたモルモットの成れの果てさ」
ゲオルグは化け物共の姿に何ら動揺せず、鷹揚とした態度でフリックの問いに答えた。
そしてフリックは何かに気付いたように一瞬だけ目を見開き、直後、嫌悪や怒りがない交ぜになったような形に顔を歪めた。
「……まさかお前……!」
「『材料』にはそれ程困らなかったとはいえ、ここまでの形にするには、いやあ随分と苦労したものだよ。何しろ最初の頃は人型すら留めていなかったのだからね」
「ど、どういうことなの……お父さん、急にイヴちゃんを渡せだなんて言ったり、化け物を自慢げに話したり、今度は何を言っているの……?」
そしてそんな父親を前にして、ロレンタは恐怖と混乱によるものか、わなわなと身を震わせながら呟いた。
「どうもこうもねえよロレンタ。要するにお前の親父はとんだマッドサイエンティストだったってだけの話だ。イヴっていう貴重な実験サンプルを手に入れる為なら手段も選ばねえし、いざとなりゃ人体実験も辞さねえっていう、それだけの話だ」
「人体実験……!?」
「あの化け物の正体な、恐らくは人間だ。あいつの言う進化実験の被験者ってとこか。何をどう弄ればあんな風になるかまでは知らねえし、知りたくもねえがな」
フリックはチラりと化け物を横目で確認しながら、吐き捨てるようにそう呟いた。
彼の言う『材料』とは、恐らくはこの地下遺跡の調査に協力した研究者や、護衛に雇った冒険者などのことだろう。
フリックの言葉を聞いたロレンタは口元を両手で押さえ、衝撃を隠せない様子で目を見開きわなないていた。
「ッ……! う、嘘……!? 嘘よ……! お父さんがそんな……」
「……」
父親を探すという目的でこのダンジョンを潜った際、恐らく彼女は父親が死んでいるかもしれないという覚悟は備えていただろう。だが、このような方向性での覚悟は備えてはいなかったようだった。
当然なのかもしれない。娘に構うことは少なくなったとしても、それでも優しい父親のままで居てくれていると信じていたのだろうから。
「さて、最終勧告だフリック君。その少女を渡してくれ。今なら余計な怪我を負わなくて済む。賢い選択を期待しているよ」
「モノで釣れないと分かれば即座に脅しに転向するとはな。学者様が聞いて呆れるぜ」
「悪いが、こちらも手段を選べるような余裕のある立場ではないという事だよ」
不敵な笑みを浮かべつつ、ゲオルグはそう答えた。
「お父さん……お父さん! 嘘だよね……! お父さんが人体実験をしてたなんてこと、ある訳がないよね……!」
そこへ投げかけられた、縋るように、ともすれば懇願するような響きを伴ったロレンタの声。それに対し、ゲオルグは神妙な面持ちでロレンタへと向き合い、ともすれば冷酷にも聞こえるような、静かな声音で告げた。
「……ロレンタ……理解してくれ。これは全て、人類を進化させる為に必要なことだ」
一切否定することなく、ただ粛々とそう述べるゲオルグ。全て事実であると、言外に主張するゲオルグの前で、ロレンタは息を飲んだ。
「……!! なんで……? どうして……! ……おかしいよお父さん……おかしいよ……。 お父さんは少し研究に夢中になって、周りが見えなくなっちゃうことはあっても、それでもやっぱり優しい人だったはずよ……? それが何で……?」
「ロレンタ、何かを成し遂げるには、それ相応の対価が必要なんだ」
静かに、言い聞かせるかのように、ゲオルグは娘にそう言葉を続けた。
しかしロレンタは、ついに感情が決壊したかのように声を張り上げる。
「やっぱりお父さんはおかしいよ! お母さんが死んでおかしくなったんだ!! お母さんが死んだとき、お父さんがどんなにショックだったかは分かるよ……! でも、でも……対価ってどういう事なのよ!? 必要なことって何!? 私やジョスカさん達に迷惑かけるだけならまだしも、関係無い人をこんな化け物に変えてまで、する意義のあるもの!?」
「意義はある……! この研究が成功すれば、人類は魔物に滅ぼされることは無くなる…… 私達のように悲しむ者を、生み出さずに済む……!」
「……分かんないよ……! 私、お父さんの言ってることが……何一つ……」
ロレンタは力が抜けたように両手をぶらんと体の横に垂らし、俯きながらそうぼつりと呟いた。
「……理解してもらえなくて非常に残念だ、ロレンタ。……だがいずれ、私の考えが正しかったと理解する日が来る。……まず、その為に必要な物を確保しなければ」
娘に拒絶されたゲオルグはその際、ほんの一瞬だけ沈痛な表情を浮かべる。……が、すぐに先程までの冷酷な表情をフリック達に向けた。
「私の目指す新人類というはね。そこの少女のように、なるべくこれまでの人とそう変わりない容姿のままで身体能力の向上を目指していきたいんだ。だからこいつも正直成功とは言い難いが、これまで製作した中でも最高の能力を備えている。これまでのが初期型とすると、こいつは改良型と言ったところか」
彼の後ろに控えていた、彼の言う改良を施された化け物改め改良型がじりじりと包囲を狭めるように、フリック達の方へと少しずつ近づいていく。直立した改良型はフリックの身長の二倍近くはあり、まるで壁が迫ってくるような異様な圧迫感を持っていた。
ちらり、とフリックは背後にある扉を振り返る。やはりというべきか、いつの間にかゲオルグによって扉は音も無く閉ざされていた。周辺の壁とほぼ同化するかのように沈黙しているそこは、ちょっとやそっとの衝撃では突破はできないだろう―――
「……!」
しかし、ふっと囁くような吐息が一瞬だけ傍を過ぎったかと思えば、次の瞬間、フリックの背後から耳をつんざくような衝撃音が響き渡った。
彼が振り向くと、先ほどまで閉じていた扉が壁から完全に分離し、対面にある廊下の壁に叩きつけられていた。一点の歪みも無い長方形だったであろう扉だったそれの形は無残にひしゃげており、最早原型を留めていないまでになっていた。
無論、誰が何を行ったかなど言うまでもないだろう。扉を渾身の力で蹴破ったばかりのイヴはフリックの方を振り返り、できたばかりの出口を指差しながら佇んでいた。
「本っ当に良い仕事してくれるなあお前は!」
フリックは嬉々とした笑顔を浮かべながら、呆気にとられていたロレンタを瞬時に担ぎ上げ、そのまま出口へと駆けこんだ。一同は部屋を抜け、広々とした通路部分へと転がり込むようにして出た。
その後ろを、改良型が追ってくる。イヴの空けた出口に向かってその巨体を無理やりに突っ込ませ、破砕音と共に壁の穴を一回り程大きくさせながら通路へと出た。
「GUuuU……」
「うわお……マジか。とんでもねえな……」
獣のような唸り声を上げる改良型を前に、フリックは半ば呆気にとられながら呟いた。
そうこうしているうちに、改良型がフリックに向かって飛びかかる。これまでの緩慢な動きしかしてこなかった化け物達と比べ、この改良型の動きは格段に速い。改良型は屈強な二本の足を駆使し、狼のような俊敏さで滑るように移動すると、たちまちフリックの前へと躍り出た。
「っぶねえ!!」
ロレンタを抱えたままの状態で、フリックが慌てて全力で飛び退いた。そして一瞬前まで彼が居た場所を、改良型が首をめいっぱい伸ばし口を開き、がきん、と音を立て空を噛み切る。
一先ず逃走と考えていたフリックだが、この動きを見るに易々と逃げられないと判断し冷や汗をかいた。、彼は腹を括り、抱えていたロレンタを腕全体を使って下方に向け転がすように、後方へと投げ飛ばした。
「きゃあっ!?」
「すまんロレンタ! こいつはお前を抱えたまま対応できそうにない! 後ろの安全な場所に居てくれ!」
腰の双剣を鞘から引き抜きつつロレンタに謝罪するフリック。その隣を、イヴが素早く駆け抜け改良型へと肉薄する。
改良型の屈強な腕や脚から繰り出される、暴風の如き威力を持った一撃を難なくかわしていくイヴ。攻撃をかわされ続けた改良型はしびれを切らしたか、攻撃がとにかく当たることを優先したのか、大振りな攻撃をするようになっていた。
「がら空きだなあ!」
そこへフリックが全力で駆け抜け、改良型の足元にまで迫った。彼はすれ違い様、改良型の逞しく筋張った足首を剣で斬り付ける。
改良型の石膏のように白い肌から、赤い血が噴き出た……と思えば、
「ぐぅっ!?」
フリックは突如腹部に受けた衝撃に、呻き声を上げる。そして彼の身体は瞬く間に、通路の白い壁に叩きつけられた。
「げほっ……!」
「フリックさん!?」
ロレンタの動揺する声を聞きながら、フリックは痛みを堪え、改良型に目を向けた。
改良型は斬り口から血が流れ出たままの、筋肉の発達した足をこちらに向けていた。成程先程はあの足に蹴られ、その勢いのまま壁にぶつかったのかと、フリックが状況を推察した瞬間、
「……!?」
フリックは思わず瞠目した。改良型の斬られた足首の傷から、まるで沸騰するかのように肉が盛り上がり、たちまち傷を覆い隠した。瞬きする間に、改良型の傷はまるで最初から斬られてなどいなかったかのように綺麗に完治していた。
「GuUAaa……」
「まさかの自己再生能力…… そりゃ反則だろ!!」
言うが早いか、改良型の拳が構えられ、そのままフリックを射抜くかと思われた。しかしその瞬間、横からひっ飛んできたイヴが改良型の頭部に矢の如き勢いをもって蹴りを入れた。俗にいう、ドロップキックである。
改良型は大きく体勢を崩されたものの、二本の足はしっかと白い床を踏みしめていた。無論先ほどの攻撃もそれ程響くものでもなかっただろう。しかし大きく隙を作ることには成功した為、フリックは素早く改良型から距離をとることができた。
「……」
「イヴ……悪りいな、助かった」
相変わらずの無表情で、しかしどこか油断を咎めるように、無言でフリックを見つめる相棒に、フリックは素直に礼を述べた。
「ははは! 流石だな改良型よ! 思った通りの成果だ!」
そこへゲオルグが喝采を送りながら、改良型の後方にある研究室の入り口から出てきた。彼は余裕の笑みを浮かべながらフリックへと問いかける。
「今の一撃はなかなかに効いたはずだと思うが、どうかねフリック君? 降参するならば早くした方が良い。これ以上抵抗しても苦しみが増えるだけだと思うが?」
「うるせえな。こちとらこのくらいでどうこうなる程ヤワな鍛え方はしてねえんだよ……」
血混じりの痰を床へと吐き捨てながら、改良型を挟んだ向こう側に立つゲオルグにそう返すフリック。
「成程、どうやら君はそれなりの経験を積んできた冒険者だということか。私もこの地下遺跡の調査の過程で冒険者を護衛に雇ったことはあるが、そいつらはちょっと失敗作の初期型をお披露目しただけで、戦意を喪失して逃げ惑うような臆病者ばかりだったよ」
「そいつらのその後の運命は……訊くまでもないか」
「ああ。皆被検体にさせてもらったよ。……彼らは運が悪かった。ただそれだけのことだ」
「そうかい」
淡々と吐き捨てつつ、フリックは脳内で考えを巡らせていた。
この改良型の運動性能は間違いなく優秀であり、現状ロレンタを連れてもそうでなくとも、逃げ足に自身があるフリックやイヴでも逃げられないだろう。
倒すにしても、傷を瞬時に治癒してしまう再生能力がある。長期戦に持ち込まれれば間違いなくこちらが不利になる。何らかの対策を講じる必要があった。
何はともあれ、時間を稼ぐ必要がある。
フリックは懐から、粘土のようなものを円筒形に成形したような物体を取り出した。それの先端を、マッチを擦るように強く靴裏に擦りつけると、擦られた先端から煙が出始めたそれを、おもむろに改良型の眼前に放り投げた。
改良型が手で払いのけようとした瞬間、
「ロレンタ! 目を塞いで後ろを向け!」
そのフリックの声が言い終わるが早いか、煙を噴き出していた円筒形の物体は唐突に、火薬が爆ぜるような破裂音と共に、爆発的な閃光を発生させた。
「キャッ! な、何なんですか!?」
フリックの警告を律儀に守っていたロレンタは、何が起きたのか分からず戸惑った声を上げた。
「……閃光筒か! なんてこと……!」
「へっ、やっぱり運動神経が良くて再生能力持ちでも、目の性能は普通の生物とそう変わらねえみたいだな。……よっしゃ逃げるぞ!」
まるで小さな太陽が唐突に出現したかのような閃光をまともに受け、目を焼かれ悶絶する改良型を横目に、フリックとイヴは背後に向かって駆け出し、未だ目を両手で塞いだまま困惑していたロレンタを回収し走り去っていった。