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第15話 お手伝い

「お客さん、暇なの?」


「え、別に暇ってほど暇でもないですけど……?」


 結衣との同居生活が始まってから二週間ほど経ったある日。


 結衣の仕事終わりを「とまりぎ」で待つことが習慣化してきた矢先に、そんな言葉をかけられた。


「いや、ここのところ毎日来てるし暇なのかなって思ってさ?」


 いつもの如くカウンターに頬杖をつきながら、環はそう問いかける。


「普通に暇ではないんですけど、ちょっと人を待たないといけなくて……」


「毎日?」


「まあ、そうですね」


 環は気だるげに「ふーん」と漏らした。


「ねえお客さん、提案なんだけど……うちでバイトしない?」


「え? バイト?」


 考えもしなかった提案に驚かされる。


「まあ、この店もそろそろ集客しないとかなって……。SNSの運用とか、時々仕入れとか、手伝ってほしくて……」


 前々から提案してきたSNSの活用に興味が湧いたのだろうか。透華としてもこのカフェが潰れては困るので、しっかり集客して利益を上げてもらいたいと思っていた。


「でもなんでバイトを……? 環さんだけでもどうにかなりそうな内容ですけど……」


 お世辞にもこの店の客は多いとは言えない。今までも環一人で回ってきたこの店に、本当にバイトは必要なのだろうか?


「や、折角努力するならこの店を大人気店にしたいな~と思って、手伝ってほしいんだよね」


「なるほど……」


 そうはいえども勉学の都合も結衣との生活の都合もある。気軽にバイトは引き受けがたい。


「そうだ、仕事の内容がちょっとしたお手伝いとSNSでの広報活動なら、バイトじゃなくても時間があれば手伝いに来ますよ。これから平日は毎日来ることになりますしね」


「え、いいの?」


「まあそれくらいなら」


「じゃあ……お願いします。連絡先だけもらってもいいかな」


 環がスマホを取り出したので、透華もそれに合わせてQRコードを用意した。


「それじゃ、これからよろしくね」


「わかりました、なんかあったら連絡してください」




◇◆◇




「カフェのお手伝い?」


「はい、これから紅葉先生を待つ間にとまりぎでお手伝いすることになりました。一応報告だけしておこうかなと思いまして」


「わかりました……」


 環と連絡先を交換した後、程なくして結衣からの連絡があったのでそのまま結衣を迎えに行った。


 家に帰ってきてお茶を飲みながら興じている最中に、「カフェの店員さんとは仲いいの?」と結衣に問われ、この報告をすることになった。


「なんか、生徒の家に押しかけてる身で言うのもあれですけど、勉強は大丈夫ですか? ご飯の用意とか、勉強とか、キャパオーバーだったりしませんか?」


 心配していることが伝わる目線を透華に向ける結衣は、慈愛の女神のような穏やかさを湛えていた。


「ふふっ、大丈夫ですよ。あと、押しかけてる、じゃないですよね?」


「これも卑下してる、扱いなんですか……⁉ ……はい、一緒に住んでます……」


 結衣はすぐに卑下し出すので油断も隙も無い。


 言葉には言霊が宿るというように、言っていると本当にそんな気がしてくるものなので、「押しかけてる」などという表現を多用していると、潜在意識で罪悪感が湧いてしまうと思った。


「でも、辛くなったら教えてくださいね? 一応大人ですから、きっと結城さんの助けになれると思います」


「ありがとうございます、頼りにしてますよ」


「いつでも相談してください。本職ですから」


 微笑を浮かべた結衣は、少しだけ誇らしげでもあった。




次回から、初めてのデート回です!(松柏)

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