愛しき傍観者たち
パチパチパチパチ!
不良たちが去ったギルドは拍手に包まれていた。
「うう、助けてくれて、ありがとうございます」
私はレンさんにお礼を言う。
あの時短刀を盗られていたら…。
「いや、君が強かったから助けるのが遅れてしまった。
ごめん、あんなのを説得できるはずないのにね。」
レンさんは先ほどとは全然違う、優しい声だった。
隣からすっと手が差し出される。
何かと思ったらクランだった。
仕事を1回紹介しただけの人だった。
「すごいもの見せてもらったよ、ありがとう!
今日ぐらい感謝させてくれ!」
だ、だめですよ!
「ほ、本当に困ったときに…」
そういっている間にギルドには50クラン札など
結構な量散らばっていた。
返却は不可能だった。
「冷凍剣当ててやりゃよかったのに娘さん!」
「そうだぞ、あんなの伝説に勝てるわけねえ!
外では3体1で負けてたしよ!」
「その後窓に悪戯としてたやつも炎が飛んできて
逃げたらしいぞ!」
「レンさんでしたっけ?すごくかっこよかったです!
お食事行きませんか?」
レンさんも相当困っているようだった。
「いや―あの…アハハハハ!
嬉しいけど、食事はギルド仲間で取るから無理だよー。」
しかし開き直って笑っていた。
相当流されやすそうだ。
「さすがマスター!あんなの鉄鉱の糸に囲まれる
より怖いよ」
「バルドさん、あの声で怒って3人吹き飛ばしてぜ!マジやべー」
「俺たちのギルド!」
「依頼者と、自分自身を幸せにするために来ているんです!
すごくいい志しだ!」
大盛り上がりだった。
…
…
「よし、このクランは困った人のための一時金として
取っておくぞ」
仕事後に、カウンターに投げ込まれたクランを
どうしようかという話になった。
結論として、冒険者のための保険とすることになった。
私もそれでいいと思う。
このお金は、ギルドのために使われるべきなんだ。




