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レベルアップが命取り?建内 日葵と不思議な服  作者: 和琴
——こうして、私は初めてギルドの扉をくぐった
8/40

勤務終了


日葵はインゴットを目の前にして、緊張した面持ちで両手を横に添える。

ずっしりとした金属の塊は、見た目以上に重そうだ。

えいっ…と強く力を入れて持ち上げる。

私は、インゴットがその場にとどまることを想像していたが、違った。

まるで私の意思ではないかのように、インゴットがふわりと持ち上がった。

冷たく重いインゴットを持ち、ルーニーさんの元に歩いた。

「ルーニーさん、持ってきました。」

ルーニーさんは届いたインゴットと、私の顔を見た。

そして、嬉しそうに次の仕事を教えてくれた。

「ありがとう。助かるよ。今度はその棚にある掃除道具を使って

 床を掃除してくれるかな?

 灰が舞うから汚くなってしまってね…」

「はい!」

重いものを持つだけじゃなくて、掃除もできるなんて!

私にも、こんなにできることがあるんだ。

体が元気になったみたいで、なんだか嬉しい!

日葵が入ってきた朝方から夕方になり、鍛冶屋での時間も終了に近づいてきた。

炉にも灰が被せられ、輝きも収まりを見せている。

魔具で空気から作ったという、お水を飲みつつ休憩していると

ルーニーさんが私に、終業以降の行動について説明してくれた。


「お嬢ちゃん。今日の作業の片付けでここを離れることはできないから、

扉から出て左に進んでいくと、右側に見えるTのマークのホテルに泊まるんだよ。

報酬は今から渡すからね。」


そういってルーニーさんは先ほどセールストークが聞こえていた扉を開いて

部屋を移動した。

随分と時間がかかっていて、

報酬だけではなく、何か探しているようだった。


その間、私は今後の事を考えていた。

「私、元気になれたのかな。バケツを持ってあんな鉄も持てて…でも…」

魔女の言葉全てがずっと気になっていた。

仕事をしていない今でこそ、より大きく頭の中を支配し、繰り返し響いてくる。

こうやって生活をできるのも短い間…私、殺されちゃうのかな。

そう思うと、胸がギュッと締め付けられるようだった。


部屋の扉が空き、ルーニーさんが何やらバッグを持って帰ってきた。

革製の、頑丈そうなバッグだ。

「お嬢ちゃん、このバッグの中に1600クランが入っているからそれを使って

宿屋に泊まるんだよ。夕食と朝食も出るはずだから心配はいらないよ。」

日葵は違和感があった。まだ、お金の価値はあまりわからない。

でもパンが高くても30クランで買えるこの国で、1600クランが入っているならあまりにも貰いすぎじゃないか。

バッグも頑丈そうな留め具がついていて、とても安物には見えなかった。

1日働いただけなのに…私に気を使ってくれたんだ。

なんだか申し訳ないような気もする。

「あの…そんなにいいんですか?私はただ…」

「問題ないよ。それに、その服。いいものを見せてもらったんだ。

 私も魔具を作れる職人だから、高価でも新しいものを作ってみようと思い立ったんだ。

 これからが楽しみだよ」

ルーニーさんはにこやかにそう言った。

その笑顔はわくわくしていて、私もルーニーさんの魔具が見たくなった。


「暗くなる前に早くおいき、ここら辺は治安が良くないから急ぐんだよ」

「ありがとうございます。本当に助かりました。」

ルーニーさんの言葉に、夜の街がどれほど危険かということが伝わってきて、怖くなった。

ホテルまで、完全に暗くなる前に急がなきゃ!と思い鍛冶屋の外に出た。



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