雲と太陽の伝説 -影を運ぶ風の律動
この大陸の猛暑期、人々は屋内に逃げ込み
働きたくない者は冒険者に頼んだ。
今日はそよ風が吹いていた。
あそこにある雲がここまで来たらと彼らは見上げた。
そして…太陽が大きな雲で遮られ、その夢は叶えられた様に思えた。
肌を焼いていたオーブンは蓋を閉じたようだった。
だが彼らは少しの間動かず、日葵を見ていた。
日葵は少しずつ視界がはっきりした。
そこは日陰で、ともかく涼しいと分かった。
精神力の消耗を誤魔化そうと無我夢中で目の前に歩き、草取りを始める。
「…皆さん、今が好機…」
そう話すが、皆さん私を顔だけ追っている。
話をしなければならないようだ。
「…どうか…しましたか?」
私は質問するとローラさんが口を開いた。
「今ね、雲がすーーーーってこっちに…」
バルドさんは難しいことを考えない顔になって話していた。
「俺もあの雲移動しねーかなって思ってたんだよ。俺の魔法かな」
困ってレンさんを見ると彼は頷いた。
レ、レンさん…!
私のもとに歩いてくると、彼は頭を抱え涙ぐんでいた。
だが、決意したようにこちらを向き彼はこう話した。
「君が命を懸けて、救われたとしても、
精霊に乗っ取られてしまうなんて俺は嫌なんだ…。」
あ。私の目から光が消えそう。
「精霊拒絶の秘薬だ。」
青紫色の瓶だ。精霊拒絶?
「これを少し飲んで、せめて人として死んでほしい。」
動揺しながら薬を差し出してくる始末だった。
私は両手をあげて、招き猫のようにしながら促す。
「あの、ともかく涼しいうちに草取りしましょう!依頼料!依頼料!」
その様子を見て、理性を取り戻したレンさんが意見をまとめるように声を出す。
「ロ…ラ…ローラ、バルド。彼女は正しい、今は草取りだ!」
レンさんは言葉を噛みながらリーダーシップを発揮している。
「涼しいうちに草取りをするんだ、みんな!」
彼らは全員で草取りを始めた。




