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レベルアップが命取り?建内 日葵と不思議な服  作者: 和琴
——こうして、私は初めてギルドの扉をくぐった
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”魔具”

「任せる仕事だけれど、ちょっと考えるね」

この少女に何を任せようか…。

目の前の少女を見た。

しっかりとした目つきはしているが

華奢な肩、危ういほど細い腕を見ていると

鍛冶屋は重労働ではないかと思えた。


とはいえ、先ほどの震えた声を聴いてしまっていた。

私もこの子を安心させてあげたい。

何ができるか見て、掃除だけでもしてもらうことにしよう…。

「今から火を起こすから、バケツに水を汲んで持ってきてはくれないかい?」


日葵は依頼内容が肉体労働であることを悟ってはいた。

しかし心が動揺するのを感じる。

自分の虚弱さに打ちのめされて人生を過ごしてきたからだ。

(普通この年齢ならできるだろう…でも私は…。ごめんなさい…)

こぶしを握り締めながら不安を吐露するように疑問を呈した。

「すみません、それは持てるかどうか…」


その言葉を聞いて、おじさんも同意見だったみたいだ。

フォローの声をかけてくれた。

「無理だったらおじさんが運ぶから、

 井戸から水を汲んで入れてくれないかい?

 どの仕事ができるのか見極めたいんだ」


いきなり、私はバケツを運ぶ仕事を任されてしまった。

でも私から見てもそれ以外の仕事は掃除ぐらいしか思いつかない。

…鍛冶屋さんの仕事ってかなり大変なのかも。

体が弱い私には、難しいのかもしれない。

(でも、この機会に働かないと自立なんでできない…よね?)

「わかりました。運んできます。外に井戸があるんですか?」

頷くおじさんを見て、日葵は外へ向かう。


扉を開けるとすぐそばに井戸を発見し傍に駆け寄った。

井戸を見ると周りの岩はごつごつしていて、中央に太めのロープがついている。

そのロープを引き上げて水を汲まないといけない…。

私にできるのかな?重そう…。

近づいてみると、井戸の側面でうっすらと何かが光っているのが見えた。

それは「引き上げよう」という名前の有名な魔具だった。

(これって…あの、ロープを引き上げるやつ…!)


この世界では魔具というものがあり、近年高価ではあるが日常生活に様々な彩をもたらしてい

た。

触媒に対して体力や精神力を捧げるタイプが中心であった。


でも、私は魔具を扱える力がないって考えていた。

それは昔、同じ年齢の子が使っていた風を吹かせる装置を見たときに、

うらやましくなって興味本位で貸してもらい動かした時だった。

私の胸は期待に膨らんでいたのに、使った途端不快感が私を襲った。

体力が足りずに体調が悪くなってしまったのだ。


ロープに金属バケツを括り付けくみ上げる準備をする。

母に注意されたことを思い出し、ひるむ心を抑えながら魔具に近づく。

「きっと…為せば成る!」

と声を出し、震えながらその魔具に手をかざす。

「どうか…どうか、私に力を貸してください…!」

私が必死にそう願うと、魔具から出る淡い光とともにバケツとロープが下っていき

ゆっくりと水が汲まれたバケツが、ひとりでに浮き上がってきた。

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