”破天荒”- 理外
ローラさんはしばらく沈黙していたが、口を開いた。
「この範囲よ。ただでさえ時間がぎりぎりなんだから
水の宝珠で体を冷やせばいいんじゃないの?」
レンさんは手を顎と腰に当てて考えているようだ。
「水の宝珠も使いすぎないようにしてるんだよ。
歴代の水の寺院の院主の祈りが蓄積されて使えるものだから、
歴史が途切れない様に毎夜捧げなおさないといけないからさ。」
バルドさんはその様子を残念そうに見ていた。
水の宝珠には水の生成や操作ができるように見えるがリスクが
あるようだった。
私は短刀を持っていない手を胸に当て、高らかに宣言する。
「あの、私が風を吹かせます!」
役に立ちたくて行ったその発言に
周りの懐疑的な目線が突き刺さった。
ローラさんが
「さっきの魔法は見事だったけど、少しふらついてたわよね?
この範囲に風を吹かせるのは、無理だと思うわよ。」
レンさんが
「うん、ありがたいけど。無茶しなくていいよ。
僕らでなんとかしないといけないことなんだ。」
役に立った直後のそんな声に私は意地になった。
「私だって、頑張れば…きっとできるから…」
目を瞑った私はフラリスさんに頼み込んだ。
「フラリスさん!お願いします。涼しくしましょう!」
一瞬の静寂の後、フラリスさんが不思議なことを言い出した。
「どうしてもっていうなら…覚悟してね。」
何が始まるの?でも涼しくできるって証明できるかも!
「行くよ!」
その瞬間私は急激に眠くなるのを感じた。
膝がガクッと曲がりふらつくが、足を少し手前について
何とかバランスを守った。
体はだるくなってはおらず、
捧げた精神の消耗だけが今までで一番すさまじかった。
全員が驚愕の声をあげた
「嘘…!」「マジか!」「んんん?」
私はぼーっとしながらも目を開けた。
そこはすべて、日陰になっていた。




