地獄畑
…10分後
1割ほどの草取りが終わったように見える。
「…俺が守る。生活は俺が守る…」
レンは草取りを続けていたが
目が半分死んでいた、彼は紛れもなく勇者だ。
「あじぃーーー」
日陰に逃げ込んだバルドの体は灼熱で燃えるような感覚を受けていた。
前衛は壊滅状態だ、このままでは依頼を達成できないだろう。
そんな前衛を見ながら、
日葵も汗がすごいから休憩していた。
補助魔法役のローラさんですら、暑そうだ。
この元畑は地獄になっていた。
このままじゃいけない…。
日葵は短刀を取り出した。
その刃がぎらつき近くの陰に光の板ができる。
魔法の短刀をまっすぐレンさんの足元に向け
「冷気よ…。レンさんに届け!」
と声を発するとレンさんの動きが止まった。
フラリスさんに私は祈りをささげる。
刀は順調に冷気を帯び始めた。
バルドさんがこちらを見た、冷気を探知したのだろう。
徐々に強く祈りを捧げ、手の冷気が強まったところで
目を閉じてフラリスさんにお願いする。
「お願いします!」
「私は、無理だと思うよ…ほかの子にお願い」
冷気はやってくれたのに、自己紹介してくれた風はだめなの!?
その返答に驚くも、ともかく周りの風をイメージしたら
一瞬私はくらっとしたが、冷気は発射された。
通りがかりの精霊さんが反応したようだった。
白い靄が広がりを見せていく。
…涼しい風が吹く。
3秒で10度は下がったかもしれない。
魔法でしかありえない現象だ。
体の弱い人には使わないほうが良いかもしれない。
私の魔法が、初めて役に立った瞬間だった。
「すごいじゃない。冷気の精霊と契約してるなんて。」
「しかたねぇ、やるか…」
少しだけ全員の活力が戻った所で、
この依頼の一つ目の転換点が訪れることになる。




