とある探索隊の話
「ダンジョンを見つけたのか。2000クラン支払うから
俺たちを調査に連れていけ。当然お前たちは命を懸けて守れよ。」
その言葉を聞いて、要求を呑むことが出来ず男は退出した。
…クソ!
発見料2000クランなんて舐めやがって!
しかも詳細調査に貴族の坊ちゃまを連れてけだと!
思い出すと手が震える。
前もケガしておんぶする羽目になった。
しかも選ばれた人間が傷付いたのはお前のせいだと罵倒される。
そんな護衛出来るかぁ!
とある夕暮方、
ろうそくが静かに部屋を照らしている。
ここは安宿だ。
男は怒り狂っていた。
何度もこういう要求が続いたからだ。
彼はとあるダンジョン探索隊のリーダーだった。
クソ…どのギルドも同じかよ、まるで示し合わせたようだ。
これじゃあ、うちの隊員を食わせていくことは出来ねぇ。
手持ちのクランは8000クランほど、ダンジョンを見つけるだけで
儲かった時代はもう1年ほど過ぎていた。
男は考えた。
この付近で残るギルドは縁の下ギルドだけか。
だがあそこは小規模すぎるし、誓いとか何とかで拡大できないと聞く。
あそこの管理人、キャロスはギルドで起こった惨劇を逃れるほどの
強者である国定魔術師だ。
「キャロスがうちの探索に参加してくれりゃましになるのにな…」
暫くはそれぞれ食いつないで、
何か状況が変わるまで機会を待つしかないのか…。
若そうな20歳行かないぐらいの中性的な女性が男に声をかける。
「報告です。その縁の下ギルドが従業員を募集していると
話がありました。
実際に1人増えているようです。」
男が驚いた顔をする。
「キャロス・ノードが魔術を教える代わりに
人員を雇うなどと言って話を広めています。」
…もしかして来るのか、このタイミングで!
「おうおう、そうかい!
強い冒険者とか揃いそうなら
俺たちも住み込みで働いて、
そいつらに調査させるのもいいかもな!」
へへへ、冗談だぜ。
まあでも、探索隊では中級ダンジョンで怪我したら終わりだ。
もし上級クラスの冒険者とかキャロスが探索してくれるなら
調査を任せるのは十分ありだぜ。
「あの、まさか自力でダンジョン探索をするつもりですか?
この資金状況でどれだけのリスクが…」
他の隊員は手伝いや雑用を請け負って
日銭を稼いでいるほどの状況だ。
男は首を縦に振る。
「俺が必要な借金をする。」
空気が冷えた、必要な金額は
1万クランは下らない。
「もし払えなかったら
解散してくれ。
俺はお前らを巻き込むつもりはねぇ。
これは賭けだ、貴族を迂回するっていうな!」
この男は自分と隊員の人生を賭けた勝負に出たのだ。
彼らは縁の下ギルドに向かい、交渉を開始したのだった。
それは、のちに明らかになる話…。




