おもいやりと最後の砦
あのTのマークの宿屋が見えてきた。
…私の初めて泊まったホテルだ。
どこか懐かしい気持ちになり顔を緩ませながらレンさんを見た。
彼はこちらを見てぎこちなく微笑む。
やっぱり困っているんだな…。
「もう手持ちが1000クランを切ってて、
これ以上は誰かの装備を売らないといけないんだ。
宿屋代もまけて貰ってるけどね、無理なんだ。」
そう憂鬱そうな声をしていて、私も心配になった。
宿の前につくと、中の様子が見えた。
PTの女性が水を生成し、バルドさんが掃除をしていた。
あのおばあさんが、作業を座りながら監視していた。
「俺も手伝うよ」
レンはそう言ってPTのほうに向かった。
私は中に入り、おばあさんに話を聞く。
「あの、何かあったんでしょうか」
そう聞くとちらりとこちらを見て動きが止まる。
少しして、おばあさんが口を開いた。
「ギルドの仕事はどした。」
私はまずそれに返事する。
「あの、私ギルドでいろいろありまして…
追い出されたとか注意されたわけではないんですが、
気分転換して来いって言われてきたんです。
その…このPTとの仕事で…」
そう話すとおばあさんは納得したみたいだった。
「こいつらか?」
そう話すとおばあさんの目線は彼らを向いた。
「宿代を少しまけてくれっていうから、掃除せい!って言ってやったんよ。
息子たちはギルドに行かせてるから儲けもんじゃわ!はっはっは。」
相変わらずがめついな…。
おばあさんは不思議そうにつぶやいた。
「何かわからんけんど、若えのにギルドでは仕事が
見つかるか、分らんらしいわ」




