怒号と逡巡
未明、あまりにも耳障りな声が響いた。
私は思わず意識が戻り、耳を澄ませる。
私の体は重く、脳は不快感に満ちていた。
つづけて、どこかの路地から怒号が飛んできた。
…ん、なに?
「あ、なんだそりゃ!」
「ギルドの壁に、落書きでもしてやるってことだよバーカ!」
らくがき…?うるさい…まだ寝たい!
「…俺の負けでいいわ、金やるから絡んでくんな…」
「ラッキー!!うひゃひゃひゃひゃ!」
足をわずかにバタつかせ、
体をよじり、耳をふさぐ。気がどうにかなりそうだった。
ギルドの壁に落書きって言った?そんな事されたら大変。
そう思って起き上がるがふと昨日のことが思い浮かんだ。
ハチュッシャのこと、
フラリスさんの助言の事…。
「慎重に危険を察知して、落ち着いて行動する。
そしたら、今できることを探せば良いんだよ。」
私は目をこすり、しょうがなく起き上がる。
廊下を歩き、私はキャロスさんの部屋をノックする。
「…ああ、外の事か…
眠いからまた後で…」
仕方ないけど、私は頭を抱えた。
頼れないなら、どこかましなところを探すしかない。
気になって仕方ないし自分の部屋に戻る気もしなかった。
何処かいいところないかな…って探しても
使っていない部屋はちょっとほこりっぽくて扉を閉めた。
とうとう2階まで来た。
私は空気穴はあるが窓はない、防魔法室にいったん避難することにした。
ぎぃぃぃばたんと扉を閉めると、かすかな音だけになった。
水晶たちがきらめく、いつもの空間。
椅子に座って壁にもたれていると、静かだし案外気持ちがよかった。
私は防魔法室で、二度寝してしまった…。




