じたばたの夜と伸びる雑草 - 日光が足りない
少しだけ本当に掃除をして、
私は何をすればいいのか迷い、魔具で作った蝙蝠さん
の的を拳で叩いてみることにした。
キャロスさんのあの雷拳が記憶に残っていたのだ。
素手で何度か試すも一向に当たらない。
「この、この、えい!」
私は真剣にやっているのに的がそれていく!
やきもきして前のめりになり、手をがむしゃらに動かす。
指などが当たったように見えても、的が消えていなくて
いつまでたっても的当てが終わらなかった。
私、よわいなあ…。
そう思い、筋力訓練を行う。
私、ダンジョンに潜らないといけないんだっけ。
どうすれば能力が上がるのかキャロスさんに聞いたほうがいいのかな。
そう思いながら腕立てをするも20回程度でその手は止まってしまう。
「はあ、はあ、息ができない…疲れる…!」
私の人生では訓練なんてほとんど経験がなかった。
汗が流れ、息も乱れる。
でも、私が20回もできれば奇跡かもしれない、これは不思議な服の力だ。
レベル測定器に向かう。
定規のようなランプが光り、レベルが表示され
"レベル4"
という表示が強調される。
昨日より上がったレベルに一瞬喜ぶも直後に魔女を思い出し暗くなる。
…何十日も誤魔化しが効くわけないんだ、それまでにレベルを上げないと。
学校でレベルは高いほど上がり辛くなるという授業があったことを思い出す。
「治安も悪いし、魔女さんは怖いし私…よわいよね。
なんでこんなに、私をいじめるの…。」
涙が止まらなくなって頬を伝って滴り、ごまかすように壁に頭を当ててじっとしていた。
冷たい感触で少し落ち着く気がするんだ…。
そうして顔を上げ、
負けるわけにはいかないと思い、
短刀に冷気を纏わせる練習をする。
媒体を意識して強めていくんだよね…。
剣から舞い降りる冷気を感じていると
火照った体も冷やされて完全に落ち着くことができた。
「何やってるんだろ私」
不安に押しつぶされたせいで何をやるべきかを見失って
この貴重な時間を有効に使うことができなかった。
心の中の焦りに押されるように行動してしまったことを悔やみながら
私は寝る準備をして3階の寝床に向かった。




