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レベルアップが命取り?建内 日葵と不思議な服  作者: 和琴
運命の場所で私は"草取り”の瞬間を待つ
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魔法の短刀と魔法の授業

ギルドの掃除などを手伝い、食事を取った際

キャロスさんに1000クランを返却した話と短刀の話をした。


するとキャロスさんは短刀を見て驚いた。

「日葵、これは…間違いなく1000クラン以上の価値はあるぞ。

 和権国の武器は温度変化にも強い素材”嶺鋼”※を使っていて

 もし魔法を覚えた場合は、冷・炎魔法あたりの

 温度変化がある魔法の訓練や使用も問題ないだろう。

 ルーニーさんは言葉通り、お前を応援してるんだ。大切にしろよ。」

※”嶺鋼”…「北連合和権国 鋼峰」からとれる鉱石から作られた温度変化に強い鋼


私は短刀をそっと胸元に抱え、こめられた思いを受け取るように頷く。

「教えてくれてありがとうございます。大切にします!」


リーファさんも私をフォローしてくれた。

「働く前は、お金の重みを実感する機会もなかったでしょう?

『仕方ない』と済ませてしまいそうなところを

きちんと誠意を示そうとするなんて、本当にすごいと思うわ。

だからこそ、みんなあなたを応援したくなるんじゃない?」


「すごくありがたいです。頑張ります、私…」

絶対、みんなに恩返しするんだ!


食事の後、キャロスさんからの指示を受ける。

「日葵ちゃん、二階の掃除を頼む」

2階を掃除していき、防魔法室の中に。

魔法の練習をするために、本棚を確認しているところだった。


「魔法の練習だろ?俺が教えてやろうか?」

キャロスさんが防魔法室に入って教師になってくれる。

国定魔術師さんの直接指導!?


「は、はい!お願いします!」

キャロスさんは、まあ落ち着けという感じで

手で制した後に基本を教えてくれた。

「魔法の基本は読んだか?」

「はい、一応…でも記載があんまりよくわかっていなくて。」


キャロスさんはそれでもいいと頷いてくれる。

「まず、何の形でもなく事象を具現化させるのがポピュラーだ。

 今から冷たくするだけという形の実習を行う。」


私は本の知識を思い出す。

「その短刀を抜いて、冷たくしてみてくれ。

 俺が、この冷気用"青"媒体を近くで持つから

それに向かって体力か精神力を捧げて

 徐々に刀身を冷やすんだ。」

青くゴツゴツとした水晶をもって、キャロスさんはそう話す。

その水晶が冷たくするための人工媒体なんだね。


この刀は30センチぐらいだろうか。私は短刀を抜く。

どことなく緑や青の混じった

波模様が綺麗で艶やかで柄は黒で

数ミリの小さな宝石が2つ埋め込まれている。

こんなに綺麗なのに刃が鋭く光り、まるで魔法服みたい

その短刀をじっくりと眺める。

私にはもったいないぐらい素敵な短刀だ。



何とも言えない表情でキャロスさんが見ている事に気が付き、

私は青い媒体に対し目を閉じて祈りを捧げ、

短刀に意識を向けることにした。


変化がない。

私はさらに精神を捧げるイメージで媒体に祈ってみる。

見た目には変化がないが、手が少し涼しくなった気がする。

そうやって、少しずつ少しずつ強度を強めていくと

明らかに私の手には短刀からの冷気が降りかかっていた。


「ほぉ…」

私が感心していると、キャロスさんが次の行動を指示してくれた。

「魔具の的を起動しておいた。

 その短刀を的に向けて固定し、

 今度は風媒体に持ち変えるから、強めに空気を流しこみ

 一気に送り出すイメージをしてみてくれ。

 こうやってプロセスを組み合わせて、複雑な魔法を作るんだ」


言葉通り、起動した的に短刀を向けて

キャロスさんが緑の風媒体を用意するのを待った。

持ち変えたのが見え、風媒体に向かって強く祈り、

イメージをしながら精神力を捧げた。


すると、シュオ!という音とともに

次の瞬間には魔法の的が砕けて

その周りには白い冷気が漂っていた…。


「魔法で発現した冷気は元の温度に戻るまで

 祈りの力として残っている。

 だから、チャージして風の力で発射することができる。」


祈りの力を蓄積して、一部を風として一気に発現することができるんだ。

どんな現象として力を蓄積するかでも、結果が変わりそうだ。


「これが熱なら熱弾になる。

 不用意に組み合わせると予想外の結果になるから気をつけろ。」

それを聞いて昨日の本の内容で気になることがあった。


「あの、精霊さんによって

 同じ属性の組み合わせでも結果が違うんですか?」

私に感心した目を向けてくれて、ちょっと恥ずかしい。


「その通りだ、だから見知らぬ者同士では全力を出せないし

 魔法研究も苦労が絶えないんだ。」


短刀を見ながら先ほどの魔法の成果についてキャロスさんは評価する。

「なかなかの冷気だったぞ。

 その柄にあるごく小さな宝石はおそらく祈りの力を蓄える希少なものだ。

 お前の才能と、その魔法の短刀が

 いい結果を生んでいたな。」


短刀はいい物なんだ、やっぱりまたルーニーさんにお礼を言わないと。

「ちなみに風は魔法の的を壊せるが、局所的な威力はない。

 水滴を纏わせて氷にするか、

 水滴を薄く発射するイメージにするとより実践的だ。

 だが、冷気だけでやるのが安全だし今の気温なら見え

 やすいからそうするといい。」


「飛ばすものを物体にして切る…ってことですよね」


「もし魔法を使いすぎると、気絶したり動けなくなったりするから

 無理は禁物だぞ。」


魔法を使った分だけ、いつもより眠い気がする。

限界を見極めておかなくちゃ。


…初めての”才能”の2文字…!?

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