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レベルアップが命取り?建内 日葵と不思議な服  作者: 和琴
運命の場所で私は"草取り”の瞬間を待つ
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扉を開けば鍛冶屋の朝

今度は自分の意思で…

2日前、ふいに飛び込んだ扉の前に私は立っていた。

ドアを握る手が汗ばむ、頭の中でいろいろ考えちゃう。


私は恐る恐る扉を開けようとすると、

ルーニーさんは外にインゴットを受け取りに行く

ところだったらしく扉が開いて後ずさった。


「わわ、すみません。」

「ああ、おはよう。」


ルーニーさんもびっくりしたが、依頼受領書を見て顔を緩めた。


「日葵ちゃん、今からインゴットを受け取りに行くんだ

 広場に馬車と商人がいるから手伝ってくれると嬉しいな。」


「はい。わかりました!」


いつの間にか私の服はきらめき、鍛冶屋の服になっていた。

私の心は働く気満々!


市場につき、インゴットを商人さんの荷車から

おじさんの手押し車に乗せる。

市場はとても賑やかで、果物やミルクなども売っていたけれど

私には手が出せない理由があった。


インゴットを30個手分けして載せて、

数日分らしいけどかなり大変なんだとわかった。

さらにおじさんはインゴットの何倍もする値段の鉱石を何個か買っていた。


魔具の元となる応鉱石だ。何種類か買っている。

もしかして、新しい魔具作る準備なのかな。


(うわっ、日葵買ってよ!ああいうの好きなの!)

フラリスさんが話しかけてきたけど、断るしかない。

目を閉じて、話す。

「ごめんね、今は…」

「そうだったね、義理を返すんだよね…」


商人さんが荷物を積み終わったようだ。

「買い終わったから、運ぶよ!」

「はい。私も一緒に引きます!」

手押し車を引いてその場を去る。

賑わいの声が遠く離れる、

鍛冶屋の店が見え、街道沿いの裏手の扉に向かう。

その後、手押し車を止めてインゴットや鉱石を手分けして部屋の中に運ぶ。

「ほんとは軒下に置くんだけど、貧しい人も

 多いから、みんなのために室内に置くんだよ」


カチャカチャと部屋の棚にインゴットや鉱石を入れていくと達成感がみなぎる。

インゴットを重ねて何個も同時に運んだためか、想像より早く終わった。


その後、木炭などの燃料の運搬をした。

鍛冶の際に必要な魔具(風起こしやハンマー等)の利用代行

道具の手入れや掃除、完成品の整理

金属片の収集

ありとあらゆる雑用を行った。


ハンマー魔具は私が力を注ぎ、

ルーニーさんが声でタイミングを合わせ

時々装置を調整する。

本来は一人で二人分の作業するための魔具みたいだ。

「体力がいるから二人でやると助かるんだけど

 魔具のおかげで一人でもできちゃうからねえ…。

 魔具がなければ弟子でも取って、毎日二人でやってたのかね。」


依頼が朝9時まで残っていたことを思い出す。

「依頼は入ってますけどいつも来ないんですか?」


ルーニーさんが頷く

「暑い時期だから、来ないんだよ。

 高い値段で依頼するのもね。」


火の粉が飛び、空気がさらに暑くなる。

私は思わず一瞬身を引くが、エプロンに任せて

再び前に出る。


確かに汗をかくけど、この魔法服のおかげか無理ってほどではない。

魔女の事は今は考えないように、私は集中する。


「この前より素早く、すごくしっかり働いてくれるね。

 本当に関心するよ。」


木炭の燃える匂いと炎の前で

熱される鉄を見ながら話す独り言を

私は笑顔で聞いていた。


お昼を食べて、午後も仕事しているとルーニーさんが少し早めに帰るよう

提案してくれた。

「この前は結構遅くまで働かせちゃったけど、後悔してたんだ。

 ホテルまでの道はその時間でも危険だって、売り場で注意されたよ。

 だから、早めにあがってもらおうと思ってるんだ。」


そういえばあの時も今も声がする。

一昨日は必死で、この部屋と井戸の間しか移動していなかった。

「売り場もあるんですね、そちらの方は?」


顔を撫でながら、ルーニーさん話してくれた。

「一人娘でね、仕事中だから今日は無理だけど、

 何処かで機会があったら話してみるかい?」


「はい!」

私は、いろんな気づかいに感謝するとともに

忘れないうちに前回のお礼を言わないといけないと思った。

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