自覚と責任
キャロスさん、リーファさんとパンやチーズの朝食をとる。
かまどで炙ってきたきたばかりらしく、香ばしくておいしい。
この二人といると家族を思い出す。
お母さん、お父さん突然いなくなって、ごめんなさい…。
私は思わず顔をうつむけパンを見つめた。視界が歪んだ気がした。
魔女さんについて何もわからないし、手紙を出すのもダメだよね…。
魔女さんのせいで感情が上下してしまう自分が情けない。
強くならなきゃ…。
食事を終えて私は朝のギルド掃除を開始する。
気になるところがないか、建物の周りを確認して
朝日を頼りにして、掃除し忘れたところがあれば掃除する。
その時、ある依頼が目に入った。ルーニーさんの依頼だ。
鍛冶手伝い募集:1名
重量物の運搬や魔具利用代行が必要。
また、魔具アイデアの相談や火起こし等作業の手伝いもできると良い。
報酬:1日140クラン 間食手当あり
今日は遅くとも10時までには参加
依頼者:ルーニー
その名前を見て一昨日の経験を思い出した。
ルーニーさんの鍛冶屋での作業、
そしてバッグと1600クランをもらったこと。
そのクランと比べて明らかに小さい数字は事実を物語る。
あの時のお給料は支援だった。
ルーニーさんにはお礼だけじゃなく誠意で返さないと。
昨日はギルド手伝いの視点で確認したが、今回は冒険者の視点で
依頼を確認してみる。
ざっと眺めると、家具運搬や定期清掃の依頼がぎっしり。
どれも大勢でないと成り立たないか、
ある程度の期間で募集する仕事ばかりだった。
魔具利用代行は体力ある大人じゃないと厳しい。
このギルドには、いろいろなタイプの冒険者や肉体労働者が
仕事を求め集い、時にはギルド内でタッグを組んで依頼をこなす。
最初から集団でここに仕事をもらいに来ている人もいるのかな?
結果的に様々な生活をこのギルドは支えているのかなと感じた。
私は2階を掃除して、途中に防魔法室に入る。
レベルは3のまま、昨日計った通りだ。
何とかしてレベルを上げないとと思いつつ本棚を見た。
昨日読んだ本が目に入った。
フラリスさんとも昨日契約はしたけれど
精霊魔法は慎重に使おうと思った。
”鉄砲水に流された男”の様にはなりたくない。
3階の部屋は自分自身で掃除するということをキャロスさんが言ってたので
自分の部屋だけ掃除した。
午前7時から9時半ばのピーク時の業務も終わり、ルーニーさんの依頼を見る。
…残ってる!
その希望を持ち、私は早速キャロスさん判断してもらう。
キャロスさんは依頼を見て、無理だと話した。
「内容を見れば、お前に向いていないのはわかるだろう。
労働はともかく、魔具のアイデア提示は難しい。
無理にこの依頼にしなくても…」
うぐ…
私は、一瞬言葉に詰まったがどうしても行きたかった。
「私、2日前にルーニーさんの鍛冶屋で働いて
もっと鍛冶の仕事を知りたいなって思ったんです。
雑用だとしてももう少し効率よくこなしたいって。
お願いします、キャロスさん!」
キャロスさんは困ったように自分の頭に手を置きこう言った。
「ああ、いいぞ。失敗したときが分かってるならな。」
成功したときは56+20クラン、失敗したときは0クランの受け取りとなる。
「ありがとうございます!」
依頼受領書を受け取って
私はギルドを出て、周りの建物を見る。
ここがこれからの私の生活拠点なんだと風景を覚え
ルーニーさんの鍛冶屋に向かった。
風魔法、苦手なんだよね…。
狭い範囲にプシュってやるイメージで昔はよかったの。
筒並みに小さい容器なら押し出すだけで簡単だけど、
出口がコップサイズまで広がると、あんな細い風はもう出せないよね。




