<警戒と慢心と>
タオルを絞りながら、会話を聞いていた魔女は
「物品の検査…」という会話の辺りで突然音声が消えたことに気が付く。
最初はか弱い日葵が寝てしまったのかと思ったがまだ朝なので考えにくい。
「これは、防魔法室か…」
防魔法室、ギルドには標準装備でこの中に入ると魔具の接続も途絶える。
その部屋があること自体、私には不愉快な事実だ。
しかし、治安が魔女の知っていた頃より悪くなっていた。
ギルドの外に誘導して日葵が死んでは元も子もない。
魔女は目の前を見る。
過去に集めた様々な素材、その素材のどれを使えばいいのだろうか。
薬を調合していると、突然音声が復帰する。
「物品リストをベースに異常がないか確認する作業もある。
…
一週間に一度は必ず誰かがやる必要がある。
ただ、お前の分の仕事をすぐには増やせないから
暫くの間は手が空いていたら頼む。」
…防魔法室に暫く連れ込んだこと、万が一を考慮する必要がある。
もしやこの男は日葵の呪いを研究するつもりなのではないか…?
それだけではない、服を奪うことも考えているかもしれない。
いや、そうだとしても問題はない。
あの服の経験値操作魔具をもってしても、
暫くの間…90日間ぐらいは到底、高レベルまでは上がらない。
…私がそうだったもの。
もしも高レベルダンジョンに潜ったときは少し惜しいがすぐに命を刈り取ればいい話。
あの呪いが大幅なレベル上昇以外の方法で外せるわけもないわ。
もし、日葵が殺されたりした場合はあの男を殺す。
あの男が日葵を保護するというなら、それは逆に都合がよい話。
私には…、そう考えてギルドの構造や仕事内容をメモするだけにとどめた。




