ギルドのお仕事説明
キャロスの経歴が国定魔術師だということがわかり
その言葉と真剣な目に期待を寄せる。
(よく本でも出るすごい人たち…国に雇われた、お抱え魔術師!)
「ちなみに、レベルは38だ。」
「私6レベル…まるで雲の上の存在みたい…」
それが本当なら、驚くべきことだ。
「12歳だろ?低いな…そうだ、今のレベルは幾つなのか測ってみてくれ」
日葵は言われるがまま、用意されていたレベル計測器に手を置く。
するとレベル3と表示された。
私は目をこする、もう一度計測点に手を置き祈る。
"レベル3"
「あれ…おかしいな。私、前に測ったときは6って…」
キャロスもその結果を見て、一瞬眉を動かしたが
数秒後には整合性が取れ納得した顔をしていた。
やはり相手は伝説級とみていいだろう。
「前に、虹色と黒の輝きに触れたといったな。
それは呪いの類なんだが、今ので分かった。
強力な"レベルダウンの呪い"だったのだろう。」
"レベルダウンの呪い"という言葉を聞いて日葵が驚く。
それは有名な絵本<神の怒りと勇者>の中で"神"が領主に罰として与える
生命力・体力を幼児クラスまで戻す凶悪な呪いの名前だった。
日葵にはレベルダウンをしたという感覚がなかった。
「そんな、だったら私は動けてないはずですよね。でも逆に体力も上がったような…」
キャロスからみて、日葵は徐々に落ち着いていた。
日葵は疑問を話すと、キャロスは少し考えこんだ後頭を振った。
そして溜息をつくと、仮説を説明してくれた。
「その服には体力・腕力・生命力を強力に補助する、そういう機能もあるに違いない。
履くと歩きやすくなる靴のようなもの。
体力や精神といった"何か"を燃料として効果を発揮するのが魔具の基本だが
こいつはちょっと常識外れだぞ。
貴重な物品すぎて命にかかわるから、
服のことは殺されてもいい相手にしか話すなよ。」
「わ、わかりました。」
日葵は服を狙われる危険を想像した。
盗られても、壊されても結局魔女か相手に殺されてしまいそうだ。
キャロスは顎に手を当てた。
「これから3レベルを基準に、レベルをごまかしていくか。
もし、十分成長したと判断されれば殺されるんだから
半分にするぐらい大胆なほうがいいかもな。」
レベル計測器を切り捨てで半分にするように調整することを思いついた
変更が少なく楽だ。
少しの間待ち、頃合いを見計らう。
…
「よし、ここを出るぞ。準備はいいな」
「は、はい!」
部屋の扉を開けて、外に出る。
気持ちを切り替え、考えていたセリフを話す。上手くごまかせると良いが…。
「というわけで、倉庫内の棚に配置した物品リストをベースに異常がないか確認する作業もある。
もし数量や状態に不備があれば、その場で俺を呼ぶこと。」
そしてにやりと、そのままの調子で話した。
「一週間に一度は必ず誰かがやる必要がある。
ただ、お前の分の仕事をすぐには増やせないから
暫くの間は手が空いていたら頼む。
俺が毎朝サッと見回しておくだけだと、
以前、高価な魔具が盗まれてな。
その時の補償金でギルドがつぶれかけたんだ。
お前には悪いが、保険の様なものだと思ってくれ。」
さりげなく、防魔法室に入るきっかけ作りだ。
「あ、あのほかの仕事はどんなものがあるんでしょうか。」
仕事か、服に気を取られてまともに説明していなかったな。
この子、思ったよりできるぞ。キャロスは冷静に返答する。
「受付と契約済み依頼用紙の回収、
あと何をしていいかわからない人の案内
掃除と不定期で検品作業を
行ってもらうつもりだ。」
日葵は自然に、ギルドの話に戻っていることに感心した。
「住み込みなので食事はあるんですよね…?」
「給料は住み込みで日給20クランの予定だ。
3食付いて警備付きだから金額としては十二分だろう。
休んだ日は当然だが給料がなくなるぞ」
「お仕事多いですね。頑張ります!」
「三階は寝室だが、6部屋ある中で奥の二つは俺とリーファの
部屋だからあとの部屋から好きに使ってくれ。」
「は、はい!」
「以上だ。…そういえば、20分もカウンターを開けてしまったから
急いでロビーに戻るぞ。」
管理人さんと私は駆け足で冒険者用ロビーに戻る。




