火のない所に煙は立たぬ
「お前、監視されてるだろ。」
その言葉を聞いて、息をのんだ。
もう一度反芻し、頭の中に雷が落ちた。
なんで、私何も言ってないよ…?
どうしよう。キャロルさんも私も殺されちゃう…!
そんな思考が頭をぐるぐる回り、私は力なく座り込んでしまった。
「すまん、その様子だと自分からその魔具をつけたわけじゃなさそうだな。
誰かに付けられたんだよな。」
そうやって話してくれるが私は黙っていた。
魔女にばれたら大変なことに、話しちゃいけないのに…。
「実は朝、ルーニーさんが君のことを伝えに来たんだ。
話を聞いていたからどんな仕事を紹介しようか悩んだよ。
だが、君が親元に帰れないという理由に違和感があったんだ。
君は帰りたそうで、なのに帰れないという感じがしたからな。」
そうだったんだ、鍛冶屋のルーニーさんと会っていて
あの時の話でそこまでわかってたんだ。
だめだ、ショックで何も言葉が出てこないよ…。
「だから君をかくまう準備として、念のため
防魔法室である倉庫と訓練室の中身を入れ替えたんだ。
錬金術の道具なんて今は使ってない
作業請負が中心のギルドだから防魔法室なんていらないんだよ」
「防魔法…室?」
「そうだ、君の魔具から出る魔力振動は微少だ。
相手は普段君の周りの声と魔具の状態しか見ていないだろう。
映像を取ってたらどうしてももう少し"空気が揺れる感覚"がするはずなんだ。
だから、物品の説明をしても違和感がないぐらいの時間なら
ここで自由に話してもいいんだよ」
「ほ、本当なんですか?」
「そうだ。今の君にはわからないかもしれないが
精霊たちも入ってこれない不干渉の空間なんだ。」
そうして日葵は初めてキャロスに今までの事情を伝えることができた。




