交渉の成果
私は夜になるまで
掃除をしたりしたが、
何より本を読みながらずーーっと
祈り続けていた。
特殊な本じゃなくてただの物語や
生活の雑学に関する本。
どうやらこの黄色と緑の宝石のペンダントは
体力や精神力の消費が少ない代わりに
長く祈る必要があるらしい。
私はこの休みを生かして、本を読みながら
祈り続けた。
私は家にいる気分になって、
つい面白かった部分を話そうと
「お母さん?」
とつぶやいた。
何気ない一言
<なあに?>
という声に飛び跳ねた。
わわわわわ!
しまった!
「あび、すみません、母を思い出して…。」
<独り言を話さないで>
ほっ…。
そんなこともあったが、本を好きなだけ読めて
久々に純粋な楽しさが感じられ夢中だった。
夕方探索隊の皆さんに冒険の内容を話していた。
「洞窟の中に入ったら通路が3つあってね…」
大変な目にあったことや敵を倒した部分は
誤魔化したりあえて隠した。
…
「危なかったね。大きな狼なんて
騎士団の仕事だよ。
初級ダンジョンで出合い頭なんて運が悪いね。」
そうなんだ、大きな狼は軍隊級の…?
一段階小さいサイズ(人の大きさ位)でごまかして
話していたのでびっくりした。
「綺麗なアクセサリ…いいですね。」
紫苑さんは鋭い、このアクセサリがきっと貴重ってことだね。
服の下に隠そう。
「いや、バルドさんが生きてて良かったよ。
君の盾の爪痕を見たとき、
凄く怖くなったから。」
カリムさんは周りを凄くよく見ていた。
勢いよく扉が開くと
マッツェンダさんが
楽しそうに飛び込んできた。
「"ほかの貴族に金貨の箱がバレるうっ。
その前に20万クランで売ってくれぇ!"
"その盾はもはや芸術品だ…1万出す!
飾りにするんだ!"
あの貴族の欲にまみれた
間抜け面サイコーだったぜ!」
物まねをしてうろたえながら
バックを置き、何か取り出す。
1000クラン札がいいいっぱいの札束!
本物!
「キャロスさん、21万クランだぜ。
1割だ。俺らは8割。
残り1割は税金だからな。
初級ダンジョンの地図を上手くさばけたぜ…」
「マッツェンダさん、いいのですか?
準備金の返却は。」
キャロスさんが札束を持ち慌てている。
「適切な探索をしてくれたんだ。
チャラだよチャラ!」
そ、そういえばバルドさんの放置した宝箱!
あれが即決の理由になるなんて、そんなことあるんだ。
「まあ、本当に金貨なら25万クランはあるからな。
だけど俺らは仕事で稼ぐ。
庶民が手を付けると貴重品は怒られちまう。」
バルドさんは国に雇われてたって言ってたな。
もしかしてそういう裏も知ってたのかも。
「今回は縁の下ギルドを活用させてもらったが、
ダンジョンの発見を報告せず調査するのも配慮が必要なんだ。
もし詰められたときは崩落したほうのダンジョンの情報は嫌いな貴族に
流すつもりだ、俺におんぶされた坊ちゃんとかな。
そういう点も助かったぜ。」
おんぶ、何かあったんだ。でも
「そんな、死んじゃいますよ…」
私は思わず口を挟んだ。
「俺も警告はする、それでも行けば自業自得さ。
なあ、嬢ちゃん。
利益が無いと血眼になって追ってくる奴らだから
そういうときの保険として覚えておきな。」
私にはその考えが良くわからなかった。
今までいい人と思ってたけど貴族さんに相当
腹が煮えくり返ってるみたい。
"間抜け面"の貴族さんはそこまで嫌いじゃないのかな…。
深呼吸をして、頭の霧を払う。
感情任せで生きていける世の中じゃないよね。
邪魔をしない様にしよう…。
彼女にはまだ、独立して行動できるほどの
心の芯があるわけではなかったが
この世の厳しさをまた一つ痛感し強くなっていった。




