闇の襲撃者と箱の盾
私は中を探知し、異常な温度がないことを
確認する。
「温度OKです。」
「探知も大丈夫よ。」
固形の水や石で叩いても
その周り自体に罠はなさそうだ。
となると怪しい箱…。
するとローラさんはあろうことか箱を浮かせた。
5つ全部だ。
「何が入ってるか知らないけど、
とりあえず今の状態だと
浮く盾と鈍器として使うのがよさそうね。」
人が一人入りそうな大きな箱もあれば
ちょうど盾ぐらいの箱、
比較的小型な箱まで浮かせて運ぶ。
「俺たちには近づけないでくれよ…」
そうやってレンさんが怯える中、鉄箱と
バルドさんが先陣を切り、元の通路に戻る。
…植物がさらに強固に元の道をふさいでいる。
冷気で止まっていた部分も動いていた。
逃がす気はないらしい。
ふと試練の盾の事が思い浮ぶ。
あれなら魔法を…。
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発生後は消せぬ。
止めに来た際に
迎撃しろ。
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…そっか、進むしかないんだね。
袋小路の中に進む気持ちで
私達はひし形を保って進んだ。
矢や毒などの罠が次々と迫り、
魔法がなければ死んでいた。
とんでもない所だ、
きっと運命の精霊が
私を殺そうとしてるんだ。
そうすると目の前に闇物質の浮いたものがあった
これって…?
「触っちゃダメ…」
警告に驚いて手を引くと
それは爪を持って空間から浮き出してくる。
威圧するように熱の煙がその体から噴き出しているのが探知できた。
陰で出来た大猿の形がどんどん熱をもって具現化する。
槍を持っているが、怖いのは何よりその赤く攻撃的な目だ。
レンさんが即座に剣に光を纏わせて飛び出し
私をかばいながら光を纏った剣を振り上げる。
「んっ!」
一瞬拮抗するどころかレンさんが体制を崩したが
光に触れた槍は脆くなり砕ける
人間の1.5倍ぐらいのサイズまで大きくなっていったが
ローラさんがさらに光弾を当てると大猿ごと消滅した。
闇魔法だ、光に弱いってことは。
「なんなんだあれ、…助かった。」
ローラさんが手を引っ張って
レンさんを立ち上がらせる。
「闇魔法の防衛システムじゃない?
…力負けしてたわね」
落ちた剣を拾いながら
「剣が曲がってないといいけどね。」
そう囁く声が聞こえた。
魔法による敵まで出現し、気がより抜けなくなった。
「す、すみません。
魔法にも気を付けます…
えっと、探知するまでは温度が無くて…」
そう私が話すとローラさんも
「確かに、実体がないせいか
私のサーチにも引っかからなかったわ…。
日葵ちゃんの様子を見て初めて気が付いたの。」
と話し、全員で少し戻って作戦会議を始める。
「レンが力負けしたってことは
相当だぜ。俺ぐらいってことだ。」
バルドさん…上級冒険者5人くらい?
そんなに…!
「俺も正直危険を感じてる。
遠隔魔法で対処したほうが良いだろうね。」
遠隔魔法…。
そうだ、このサレット
祈りの強さに応じて光が強くなる気がするし
ローラさん、私、レンさんの光魔法中心で
戦えば楽になるんじゃないかな。
問題はこの先の通路に潜んでいるかだけど…
いっそのこと、通路を照らしてしまうのはどうだろうか。
…さすがに危険だろうか。
闇の中だからモンスターが出てきていない
だけかもしれないし。
(相談は必須だね。)
でも逆にサレットを使わないことが危険かもしれない。
フラリスさんも暗に、悪くない選択だって教えてくれてるみたいだしね。
それにしてもお部屋を探索しないのはもったい…
いや、そんなこと考えちゃだめだ!
(おたから…おたから…)
ちょっとやめて…。
フラリスさんの口調、なんかウキウキしてる。
…ダンジョンに気が滅入るばっかりじゃだめだよ円。
(今は地図が一番のお宝だもんね。
生きて帰れば大儲け。)
目の前の通路の闇と、左右に広がる扉が
まるで意識を闇にのむように広がっていた。
フラリスが”面白い部屋”の仕掛けを探知できた理由は
応鉱石がこの遺跡に張り巡らされているからだ。
つまりトラップのある部屋もあるかもしれないということ。
何せ軍事施設なのだ。
最早それを管理している古代人は居ないとはいえ、
転移して時間がそれほど立っていないため、危険な動植物が
生き残っていたり巧妙な罠が機能している可能性が高かった。
危険は利益を生む…
けれど危険を利益に変えるには、命が要る。
今回に限っては脱出を優先するのが正しいだろう。
忘れてはいけない、運命に命を狙われている。
それだけではない、あらゆる人への恩返しを
彼女は背負っているのだから。




