舟は船頭に任せよ
おばあさんの申し出に私は驚いた。
「えっと、あのそんなにいきなり…」
と話すも私の話は後という感じでおばあさんはしゃべり続ける。
「キャロスさん、この娘さんは日葵ゆうて
今は一人で生きとるらしい。
でも、こんな若い娘さんあの治安の悪いホテルの辺りに
毎度帰らせるのも怖いやろ?
アンタのところもあの事件までは結構従業員人おったわけやし
一人ぐらい働かせてくれんかなぁ。」
キャロスさんはじっと私を見て何か考えていた。
私はその目を見て採用してもらえるか不安になり
うつむいて手を握った。
やがてキャロスさんは口を開き、こう言った。
「施設を案内する。付いてこい。」
私は顔を上げて、キャロスさんを見る。
「おばさんは帰ってくれてもいいが、
ついでに従業員の依頼も出してくれないか?
若いの派遣できるぞ。」
おばあさんは「そんなよゆうねぇわ!」と笑い、
私の背中を強くたたいて「頑張んな」
と声をかけてギルドの扉の向こうまで歩き、扉を閉めた。
「さっそくこのギルドの紹介でもするか…。」
キャロスさんはそう言って私にこの場所の説明を始めた。
「まあ、この辺りは…見た通り、冒険者に依頼を受け渡し、報酬をやり取りするところだ。
依頼受領書・完了報告はギルド専用のスタンプとサインの組み合わせで、お客さんに納得してもらってる。」
カウンターに取り込み中の札を立てたキャロスさんが
私を連れて、カウンターの内側にある扉に入りギルドの中の施設を案内してくれた。
「目の前の扉が依頼者用のカウンターに通じる扉だ。
依頼者用のカウンターには冒険者用と違って面談スペースもあって、
冒険者と依頼者がやり取りできる。
右通路にあるテーブルでちょっとした資料を書いたり、昼間に食事を取ってる。
通路の先がちょっとした調理場になってるのが見えるだろ?
下は地下室になっていて、酒や薬草の保存場所になってる。
あとはもう使わない資料を一時的に箱に入れてるぐらいかな。
ああ、ここのトイレは最新式だぞ。
もし暴力沙汰なら、一応廊下とカウンター下に武器と盾がある。
部屋にカギをかけてもいいが、俺が助けるからなるべく呼んでくれ。」
へぇ~すごくギルドっぽい!と思っていると
「2階にパントリーと訓練室があるから上に行こう。」
とキャロスさんが上に向かう階段を指さした。




