買い出しの気使い
仮設のテントを片付けていると諦神さんが
話しかけてきた。
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座れ。
背で手を伸ばせ。
筋が前に寄りすぎた。
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申し訳ないけど片付けをカリムさんにお願いして
背中に手を当てて体を伸ばしたり休憩した。
体がかなり疲労しているのを感じる。
腕はもう半日でびくびく痙攣している。
それを見たカリムさんが笑顔になる。
「そうだと思ってちょっと高かったけど
豆と塩を買っておいたよ。
きっと夜に出るから食べて元気になって。」
え、そんな…いいの?
「あ、ありがとうございます。
でも自費なんですよね…?
良いんですか?」
「いいんだ、探索が成功しなきゃつぶれるから
7日間は全力でサポートするよ」
そうだ、成果で返さなきゃ。
私はバルドさんに支えられてギルドに入る。
まるで急病みたいだけど、
確かに体力や精神力を捧げすぎて余裕がない…。
「あの、本日の稼ぎは190クランです。」
レンさんと報告した時キャロスさんは心配してくれた。
「190!40人以上を…
気を使えなくて済まん。
大変だったらギルドの中に案内してもよかったんだぞ。」
ギルドには青媒体が輝いていた。
訓練用かもしれないけど
それを使えば冷気の魔具はいらないね。
「魔具と比べると効率は落ちるんだが、
試してみるとないよりましだな。
今年の猛暑期は暑すぎた」
そして褒めの言葉だ
「よくやった、きっとみんなが助かっただろう。
冷気の魔術師は
金持ちが雇うから高いんだ。」
…独占してるんだ、こんなに暑いのに。
「しかも精霊も無制限ではないしとくに街だと
契約しづらいことが多くてな。
俺も契約できたのは出力調整が苦手な奴、
だからこうしてるんだ。」
青媒体を指さす。
出力調整が苦手…フラリスさんの風魔法みたいな…?
フラリスさんみたいな専属の場合もきっとあるし
人口密集地では需要の多い精霊は契約しづらいのかも。
「ギルドとしてこういう異常な日に
街を助けるのは悪くないかもしれない。
もしかしたらまた頼むからよろしくな。」
暫く食卓で休憩していると
ローラさんとリーファさんが夕食を作ってくれた。
「今日はごちそうよ。
豆とパンとチーズ!」
食卓には塩のかかったパンと普通のパン
豆、チーズが並んでいる。
「カリムさんが500クランの塩を買ってきて、
体を大切にしてくれって。
お金は断られちゃったわ。」
500クラン!
その塩は、ひと握りにして十回は取れそうだった。
ダンジョンで稼いで給料で返さないとね…
ここの地図を見たことがある。
海からは比較的近い。
しかし、ダンジョン密集地帯があり
回り道しないと行けないため
塩の値段が比較的高どまりしている。
(豆を食べると体が治りやすいみたいだよね。
人間って不思議。)
そうなんだ、きっとそこも気を使ってくれたんだ…。
これはシンプルな豆だ、私の一番好きな豆ではないけど
じっくり味うととてもおいしくて、
ゆっくりかみしめてから飲み込んだ。
私はありがたみを感じながら楽しく夕食を頂いて
息をついた。
体が重いや、今日はもう訓練もせずお手洗いに行って寝ちゃおうかな。
バルドさんが親指を立てて手を差し出してきたので
私も親指を立てると、皆が軽くなでてくれる。
スキッチという勤労を労うスキンシップだ。
へへへ。




