仕事がない!
今日もまた猛暑期、暑い日差しの中
いつも通りギルドの掃除やカウンターなどを行っていた。
重りがついているけどなんだかそこまで辛くない。
魔法服のおかげで訓練にならない気がする。
働いていると来ていた男性の方に声を掛けられた。
「この看板って誰が作ったの?」
足の所に名前があったよね。
「はい、それは足の所に…」
「ゲイジャー・ボロムさん?
探して看板頼むか。」
凄い、あの人は無償提供をお金にしたんだ。
そうこうしていると、確かにギルドが人員過多な気がしてきた。
依頼を見ていると拠点間の荷物運送手伝いというのがあった。
…訓練にしても露骨すぎるかな。
うーん一人でできそうな仕事がない。
レンさん達も参加すると多分妨害されるし
難しいよね…。
ダンジョンはここから1時間ぐらいらしいけど
何度も見に行ったら場所がバレる可能性もあるよね。
隠してあるって言ってるし。
…八方ふさがりだ。
どうしよう。
私はフラリスさんに体力を捧げて
目を閉じてヒントを伺う。
「仕事ならキャロスさんに聞くか
そのまま働いたらいいと思うよ」
「ありがとうフラリスさん。」
…そうだよね、私の思考での最適解を
提案してくれるんだから
こういうこともあるよね。
私はキャロスさんに聞いてみる。
「何かギルドでの仕事か、受けたほうが良い
依頼はありますか?」
キャロスさんは手を当てて考えた後、
私に提案してくれた。
「飲食店の給仕役とかはどうだ?
いや、忘れてくれ。
運送…いいや、忘れてくれ。」
きっと給仕は服の変化の問題で
運送は私の発想と同じでダメなんだろうけど…。
ダメだ、私。
成長したいのに成長できないし
役にも立てない!
考えるんだ、何か役に立てて
肉体労働にならない方法、考えるんだ!
私は必死で考えた、掃除をしながら必死で考えた。
そして結論が出た。
草取りと依頼者カウンターの話から考えた。
私はこっそり闇物質を作る。
そしてそれを四角い板に変化させた。
そして祈る。
精神を込めて祈る、祈る、祈る。
冷気が貯まり、涼しくなると早速冒険者さんが入ってきた。
汗だくだ。
「今日は特別にお扇ぎして居ますがいかがですか?」
「え、いいの?じゃあお願いします。」
何やってるんだろ私…。
「暑い中お疲れ様です!」
魔法服と闇物質の軽さのおかげで
負担はほとんどなかった。
しかもこれは空気を送った分訓練になる。
「すーずしい!ありがとさん!」
次の人が入ってきた。
「お、冷気娘さん…魔法?」
「今日は特別にお扇ぎして居ますがいかがですか?」
「え、うん。」
何やってるんだろ私…!
「暑い中お疲れ様です!」
「ほんとに涼しくなるね。
3秒で10度ぐらい
いや1秒で20度冷えた気分!草取りでは役に立つね」
「ありがとうございます、でも1秒で20度は兵器では…」
そうこうして私は訪問者を涼しくし続けていた。
好奇の視線が刺さる。笑う人も、手を振る人も。
そのうち、路上にいる主婦風の女性が突然ギルドに入ってきた。
「家までまだ距離があってこのままだと
頭がおかしくなりそう、扇いでほしい!」
顔が赤くなっており、大変そうだ。
何やってるの私…!
「暑い中お疲れ様です!」
「ありがとうございます。助かりました。
体力もあんまり使いたくなくて…」
そういって5クラン握らせてくる。
…だめですよ!
「あ、あの。お金は…」
女性は安心した表情で早口だ。
「命を救われた気分なの。
冷房なんてお金持ちしか買えないんだから。
えっ、これもいいんですか?」
ふと見るとレンさんが水の宝珠をかざしていた。
「水です、飲んでください。
困ったときは助け合いです。」
女性の前で水を作ると彼女は水を飲み干した。
「ありがとうございました!」
そういって女性は逃げて行った。
お金を私の手に残して…。




