風魔法くらべ
お昼休み中にローラさんが声をかけてきた。
「ねえ、相棒さん…まだ元気ないの?」
フラリスさんの事だ、前会話してたもんね。
私は目を閉じて聞いてみる。
「大丈夫?」
「…うん。多分後2日は無理」
私はローラさんを見て首を振る。
ローラさんは残念そうにしている。
「ちょっとあの時のことが気になってて、
折角だから比べてみようかと思ったの。」
あの…草取りの時?
「なにやりたいんだ?魔法比べ?」
フレアンさんが嬉しそうに話してきた。
面接よりも明るくて、すぐ友達になれそうだ。
「そうね、ちょっと外に出て
そこから見える木を揺らしてみましょう。」
私たちは少しの自由時間で外に出て、
街の郊外、ダンジョン密集地帯側の丘の木が見えるところまで向かった。
その場所は少し高い場所になっていて、下に川が流れている。
あの川はホテルのおばあさんが水を汲む所だろう。
光が煌めく穏やかな空気が漂っているのが見えた。
「あの一本に風をかけて、どれだけ揺らせるか勝負だ!」
そういう競争も楽しそう!
「あの20メートルぐらい先の普通サイズの木に対してだね。」
「まって、その前に…。大丈夫そうね。」
ローラさんは目を凝らし、人がいないか確認している。
魔法でのサーチもしているのかもしれない。
「まずは私からだね。」
フレアンさんがお祈りする。
「よし、気合入れていくよ。」
…木はさららと揺れた、あの下にいたら心地よさそうだ。
草取りの時にこんな風を吹かせたかったな…。
「自己新記録かな、目に見えて揺れたし!」
「いい風だったわ。涼しくなったわね。」
次はローラさんだ。
「私は上手いわよ…!」
周囲の空気が揺れる感覚がした。
ぶおぉぉぉぉ…と強い風が吹いた。
こちらまで風が吹いてきて、木の枝がしなって折れそうだ。
魔法の熟練度の違いを感じた。
フレアンさんが感心したようにローラさんを見る。
「凄い風…。
ローラさん、魔法凄いんだ。
今度教えてもらおうかな。」
「そうね、いつでも相談に乗るわ。」
出会ったばかりなのに、二人とも仲がいいなあ。
よし、次は私の番だ。
(勝負なら…やるよ。)
フラリスさん?大丈夫なの?
(うん、勝負には負けたくない…!)
分かった、一緒に勝とう!
私は目を閉じて精神を捧げて祈った。
「…風よ吹け!」
少しくらっとした後、
ピキ…ざぁぁぁって草が揺れる音がしたけど
私の所までは風が吹いてこない。
「風が…来ない。」
フラリスさん、諦神さんとの戦いで体を壊しちゃったんだね。
「うまくできなかったんだ。
休まないと…ごめんね。」
フラリスさんも悲しそうにしていた。
「精霊さんの調子、悪いみたいで…
ごめんなさい。帰りましょう」
私は肩を落として背中を向けた。
「あれは危険だよね!あはははは…」
「まあ、そんなこともあるわよね!あはははは…」
二人とも、私を励ますために
明るい雰囲気を出してくれて
少し心が落ち着いた。
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過ぎたるは
及ばざるが如し
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その後私は午後の仕事をして、夕方になった。




