<遺言>
魔女は日葵と会話してから
落ち着くことがなかった。
頭の中をいつも以上に日葵のことが
駆け巡る。
会話などすべきではなかった。
日葵はまずこう言った。
「私、魔女さんと会話したくなったんです。
…
感謝しているんです。」
私はしたくなどない!
死にたくないといった直後だというのに。
「時が来たら、私だけ刈り取ってください。…」
…生意気な!
時が来れば、望み通り刈り取ってやる!
自ら死を望むなんて文字通り馬鹿な奴だ!
しかもその日、私の音声監視の前で
訓練などを始めた。
「1・2・…」
30分もだ、
まるで早くレベルを上げて
死にたいかのように。
そこまで苦痛か。
私に遺言を残すほど苦痛か。
そんなに私を苦しめたいか。
「…
今のうちに見識を深めておきたいと
今回の詳細な調査に同行する予定です。」
死ぬ前にダンジョン調査か。
それがお前の夢か。
お前にも、やりたいことがあるのか。
いっそのこと直ぐ殺してやったほうが
楽に逝けるだろう。
しかし私はこうして生かし、監視しなければいけない。
もしも、私がこんな馬鹿なことを考えなければ…。
「いやさ、噂だよ。1か月後に撤退するって」
腐敗した大地は厄介だ。
奴らは戦術に適応する程度の知恵がある。
国が防衛線を下げるのも不思議ではない。
もしその時にガーネス町まで侵攻され
服が壊されでもすれば全てが台無しだ。
場合によっては、日葵を守る必要もあるか。
…のちに殺す対象を。




