3人目とまさかの4人目
扉が開き、3人目が入ってきた。
なんだか賢そうな人だ。
落ち着いている中性的な女性だ。
「夕暮方紫苑です。
16歳ですが、もう働いており
将来も交渉する仕事を目指しています。
普段は資金管理と交渉補助などをやっていて
今回は探索時のヘルプの面談ということで
伺いました。」
なんでだろう、微笑が少し怖い。
きっと私が萎縮してるんだ。
「キャロスノードです。
依頼者カウンターでの受領
や交渉をお願いしたいので
そういうことに慣れている
方を依頼したのですが、
そういった業務は可能ですか?」
依頼者との交渉は私もやっていない。
多分何かが大変なんだろう。
「ええ、普段からマッツェンダと
貴族の間を取り持ってますから。」
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
力を持つ権力者等
交渉事は無意味
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
諦神さんもきっと何かあったんだ。
「そうですか、なら安心です。
ここの辺りは貧富の差が大きく
貴族の依頼もあるので。」
…ローラさんが依頼妨害されてたもんね。
腐敗した貴族…もいるんだよね。
紫苑さんが心配そうに話す。
「そうですね。そう伺ってます。
最近ちょっと酷いので
苦労していませんか?」
キャロスさんが頷きながらも自信ありげに話す。
「私がいるのでそこまで酷くはないです。
これでも"ブラックライト"ですから。」
異名かな。
「そこの方は娘さんですか?
こんにちは。」
「あの、私は住み込みの建内日葵です。
本日は誠にありがとうございます。」
「その年で働けてるの?どんな風に?」
私が面談されているみたい。
…キャロスさんが手で制している。
「この子の働きぶりは評判で
看板のプレゼントをもらうくらいなんです。
今のうちに見識を深めておきたいと
今回の詳細な調査に同行する予定です。」
こちらを見て、やっぱり少し怖い微笑。
「凄く沢山の飾りをつけているようですが。
それは何ですか?」
私は自分の身の回りを見た。
魔法服と腕輪だけだ。
…この人…!
キャロスさんが口に人差し指をあてる。
「まあ、憧れる年頃ですから。」
私もこっそり確認しようと頑張る。
「私からも質問させてください。
交渉の際に環境の確認を
よくされるんですか?」
こちらを見る。
「そうですね、交渉時にその確認を怠ると
裏で相談されていて
後手になることもありますから。」
会話機能よねと言わんばかりだった。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
自信を持ちすぎると
痛い目を見る
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
私の事…?
それとも紫苑さんが想像しきれてないことを
言ってるのかな。
ならどちらにしても…。
「私、ここ数日で色んな経験をしてきました。
想像よりすべて斜め上の出来事でした。」
私は限界まで上を指さし、その後私の頭に指をつけた。
「交渉で常に状況を確認することは
とても大事だと思います。」
私は自分の首を切るフリをした。
これでただならぬ事態とは伝わるだろう。
キャロスさんの指と私を交互に見て
とても驚いているようだった。
「勝手な推測、失礼しました。」
「ともかく、交渉ごとに慣れていそうで
安心しました。
ヘルプの際はよろしくお願いします。」
すると、彼女は紙を取り出して
そこにあったペンで「後で事情を聞かせて」
とメモを差し出してきた。
キャロスさんは黙って頷いた。
「そちらの日葵さんの装備が無いということで
何時も贔屓にしている服屋を連れてきました。
事前に準備はしていたため、普通は7日ですが
4日後には完成すると思います。
とはいっても、兜や武器などは
ご自分で用意して下さい。」
まさかの4人目だった。
それを聞いた時、私の服は
シャツみたいになり紫苑さんは
声を出さずとても驚いていた。
そうして面談は無事に終了した。
きっと諦神さんもいったん納得してくれたと思う。
面接官だもんね。
私が退出した後も、キャロスさんは退出せず
向こうも同じだった。
私はみんなとご飯を食べていたけど
どんな話が行われているのか、少し気になった…。




