ホテルでの朝
起床し、いつもより固いベッドの上で起きる。
しなやかな身体が、私の意思と一体化して自然に動いた。
なんだか体力がしっかり回復している気がした。
起きた直後に、思わずお母さんの姿を探す。
だが、窓の鉄格子を見て現在の境遇を思い出した。
服を確認すると、もはや鍛冶屋の服ではなく
フードの付いた顔を隠せる服になっていた。
私の治安の悪さから身を隠したいという気持ちが出たのかもしれない。
その厚手な外見と異なり意外にも涼しかったが
外の気温を意識すると、服は薄手にその姿を変えていった。
私は不思議に思いながら部屋を出て用を済ませる。
そのあと、おばあさんに朝食をお願いし
部屋に戻ってバッグの中身を確認した。
中を見ると手紙が入っており、布袋にはお金があった。
布袋の中身を取り出し、札束を数える。
何回も数えなおし、少しずつ不安が大きくなる。
「1000クランしかない!」
1600-500 =1100 →100クランも消えてしまったことに驚く。
だが、バッグの中身はもともとシンプルであり他に盗まれた
物はないため、ほっと息をつく。
私は手紙を手に取り、内容を読み直す。
そこに書かれた"縁の下ギルド"という名詞について思いをはせる。
ギルド…日葵のイメージは
"力自慢や荒くれ者が冒険や討伐で一発当てる"
というものだった。
「私なんかがギルドに行って大丈夫なのかな。
それとも"縁の下ギルド"だからちょっと違うのかな?
ルーニーさんが勧めてくれるんだから大丈夫だよね。」
そんなことを考えていると、おばさんがパンとチーズ、蜂蜜の飲み物を持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
「ゆっくりお食べ。
ここら辺は治安が悪いから、また宿を出る前に
声をかけておくれ。」
「はい、わかりました。」
私はご飯を食べ終わり、廊下に置いてあった壺の水と布に気が付いて
私は体をふいた。
どう拭こうかと最初は戸惑った。
でも手を拭いていると、腕にもその冷たい感触が届いていることに気が付いた。
魔法服は私の意思によって拭こうとしている箇所だけ服を貫通し、
直接私の体を拭けているようだった。
体をふき終わり、石灰のような香りをかぎながら考える。
この魔法服はなんなんだろう。
一般的な魔具ではないしルーニーさんも珍しいものと言っていたな。
それと同時に日葵は魔女のことを思い出し、すごく嫌な気分になった。
この世界では、魔具・魔法で水も生成できますが
体力をたくさん使うので、ホテルや鍛冶での利用は現実的ではありません。




