<貴女と>私の▲対話▼
私は仕事後、冒険者用のカウンターの中に座り
まるで目の前に冒険者がいる様に声をかけた。
夕暮れと、静寂の中で、あの魔女さんの姿を思う。
「魔女さん、聞こえますか」
<…>
「私、魔女さんと会話したくなったんです。
私に服を着せてくれて、感謝しています。
辛いこともあったけど、私の夢の一つを叶えてくれた。
とても感謝しているんです。」
<貴女から言われたくなどない>
<貴女は私の敵よ。考えずに、ただ従えばいいわ>
「時が来たら、私だけ刈り取ってください。
私は、仲間さえ無事ならそれで良いと思っています。」
…本当はよくないけど、その時にもはや選択肢がないなら
私は受け入れる。
<怯えていたはずだ、生意気な!>
私の心、考えているんだ。
素直に受け入れる事、おこってるの…?
「…本当に服を外せないんですか?
どうして殺されてしまうのか、教えてください。」
自分の声が震えだしたのを感じた。
覚悟したはずなのに…。
<あの服を外すことはほぼ確実に破壊を伴う。>
<問題を一刻も早く解決するのは当然よ。>
私にはなぜだか葛藤しているように感じた。
「魔女さんもつらい何かを抱えてるんじゃないですか?
私に何かできないんですか。」
<今、いかに抵抗しようと貴女を連れ戻せる準備をしている。
たとえ防魔法室に籠ろうと逃れる手段はない。
覚悟しておけ、これ以降は応答しない。>
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無駄な努力だったな。
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私はわかりました。
魔女さんにも恩返ししなきゃいけないって。
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…なぜだ、狂ったか。
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魔女さんもきっと苦しいんです。
何かもっと強引な手段も取れたはずなのに
自由に生きる権利を少しだけでもくれた。
踏み切れなかったんです。
私がこの服を壊さずに脱ぐ方法さえ見つければ
私にとって…ただの恩人です。
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…罪人共感か
それとも、誠の心か
心を読めても
掴み切れぬ奴め。
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私は、魔女さんの言っていた連れ戻す準備について考えた。
転送以外にも連れ戻す準備をしている。
私も急がなくちゃいけないんだ。




